2013年 10月 29日

ウィル・ペリー「四十二丁目の埋葬」読了

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 1970年代のアメリカン・ニューシネマみたいな感触の小説。あんまり
ミステリではない。
 ヒトの主人公はいるが、むしろ70年代前半のニューヨーク、42丁目が
主人公だ。

 主人公、チャールズ・ド・ゴール・タイラーは南部出身、25歳の白人、
ゲイである。

<タイラーのセックスの好みを満足させるうえでは、軍隊はずっといい
 ところだった。あまりにいいところだったので、除隊したあとはニュー
 オーリンズに居つくことができず、南部のどこにも居場所がなかった
 ので、あらためて逃げ出すことになった。貧しい黒人と同じように、
 今度はニューヨークへ逃げた。>(p30上下段)

 南部ではいちおう上流の生活をしていたが、息子を呼び戻したがる
父親からの乏しい送金では、ニューヨークでは暮らしていけない。
上品な見かけこそあれ、自分の属していた階級にふさわしい仕事を
得る能力もなく、42丁目に流れ着く。
 そこで軍隊時代の黒人の友だちに会い、彼の外貌を活かした職を手に
入れる。紳士風のスーツを着て、大金持ちたちに麻薬を運ぶ仕事だ。

<手持ちの貧弱な服のなかではとびきり上等なスター・クラスといえる
 一着を取り出した。きちんとした高価なスーツで、タイラーが選び、
 ギャングが金を支払った。
 [中略]
 袖口とえりに香水をちょっとつけた。フランス製の気品のある香りで、
 タイラーが自分の金で買ったたったひとつのぜいたく品だった。その
 香水がロシアバレー団の主宰者ディアギレフの愛用した香水である
 ことを、タイラーはなにかで読んで知っており、鼻をくんくんいわせて
 オレンジの花の香りをかいだ。>(p18上下段)

 web検索してみると、香水はたぶんミツコだろう。

 南京虫のたかる汚い部屋で、42丁目の心理ガイドブックもどきの
日記を書き続け、いつか大金持ちになる日を夢想するタイラーだが、
仕事仲間のひとり、彼好みの黒人が逮捕された。
 彼が売ったのではないかとギャングに疑われ、自分の場違い性を
突きつけられる。自分は所詮、南部のお上品な白人であり、42丁目の
タフな風土には適合できないのだと。
 逃亡に失敗したタイラーは殺され、ギャングたちの仲間割れは続く。

 吹きだまりのルポルタージュだ。街への愛と諦観のある感じのいい小説
だが、ジョージ・バクスト「ある奇妙な死」みたいに、手元に置きたいと
までは思わなかった。

     (HPB 1976初 帯 VJ無)





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by byogakudo | 2013-10-29 15:09 | 読書ノート | Comments(0)


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