猫額洞の日々

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2013年 11月 10日

J・G・バラード「燃える世界」再読中(2/3)

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 大昔に読んだきりで当然忘れているが、こんなに名作だったのか。
「狂風世界」はイマイチだけど、これと「結晶世界」「沈んだ世界」
は傑作だろう。と言いながら、「沈んだ世界」を再読していないので
断言はできない。そのうち手に入れて読み直してみなくては。

 地上に雨が降らなくなった。河川が干上がり、船は泥水に埋もれ、
人々が脱出した市街地は荒廃する。
 海もまた膜に被われてしまい、雨をもたらすことができない。積雲は
いつも海上にあるが、雨は沖合の皮膜の薄い箇所にしか降らず、ただ
満々たる水を湛えてタンタロスの苦痛を味わわせるだけの、目の前の海
である。
 それでも水に飢えた人々は、本能的に雨のふるさとである海岸に押し
寄せる。海水から僅かな水を得ようと、水路を我が手に引き入れようと
争いながら生きる。

 パニックと闘争の物語であるのに、何事も起きてないかのような、
ひっそりした感触しか来ないのは、主人公の孤立感故だろう。

< ランサムは砂丘を登って、頂上に出た。[略]
 干あがった河に再び戻って来たことで、ランサムは、かつてあの
 ハウスボートの甲板に立って周囲の乾いた河床にとり残された
 さまざまの物体を眺めたときに感じた孤立__時間の中の孤立
 __をまたしても感じた。河口がひろがっているこのあたりでは、
 彼を他の人たちから分け隔てている距離がいやが上にも大きく
 なっていた。おいおい、時がたてば、砂丘の上を風に吹かれて
 漂っている砂がそれなりの形でランサムと他人とを再び結びつける
 だろうが、さしあたっては、彼らはみな、それぞれ自分だけの完結
 した非連続の世界を形づくっているのだ。>(p156)

 主人公はほとんど眼差しだけの存在であり、彼の知人たちは
バラード・ランドの住人らしく、けばけばしいキャンプな醜悪さに
あふれている。(シェイクスピアを読まなくてはと、ここでも思う。)
 ゴーレムたちが白昼にうごめく静かな砂漠への道程。

   (創元推理文庫SF 1970初 J)

(11月13日へ続く~)





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by byogakudo | 2013-11-10 14:10 | 読書ノート | Comments(0)


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