2013年 11月 24日

ジュリアン・シモンズ「犯罪の進行」読了

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(~11月23日の続き)

 とてもイギリスっぽい小説。ミステリというより風俗小説に近い。
主人公を田舎の鼠に例えたが、都会の鼠に一時、よろめいたけれど、
彼の頑固な倫理性が憧れを吹き飛ばす。

 ヒュー・ベネットは逮捕された少年の姉に惹かれて、少年を救う
道を考える。大手の新聞記者はマスコミの力を借りて、息子を
釈放させられる、と労働党の州会議員である父親を説得する。
広報やイメージの大切さは60年代以後、以前よりもっと重要性を
増している。

 検察側も弁護側も、陪審員裁判というゲームに勝つための戦術に
頭と反射神経を動員する。少年が殺したか、手は下していないのか、
という事実の問題ではなく、陪審員にどちらの主張が正しいと感じ
させられるか(考えさせるのではない)、その技術の問題である。

 少年の無実あるいは有罪性に関心を持つのは、家族とヒュー・ベネット
くらいなものだ。少年に有利な事実を探し出したり、裁判の進行に読みを
働かせたりする世知にたけた大手紙の新聞記者も、倫理には遠い。

 ヒュー・ベネットは大手紙の誘いを断り、今の仕事も辞め、<「きみは
むずかしい女だなあ。」>(p109下段)と男から言われる、同じく頑固な
娘と結婚しようとするところで物語が終わる。

 逮捕された少年は、同時に逮捕された仲間内のボス格である少年に憧れ
続ける、無自覚なゲイだ。そうは書いてないけれど。
 家の中でも、集会で演説するような内容と口調で話す父親に反撥しながら
はね除けられず、非行グループに参加し、ストレートな力を見せつけるボスに
理想の自画像を投影する彼の哀れさは、いい。

     (HPB 1993再 帯 VJ無)





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by byogakudo | 2013-11-24 14:22 | 読書ノート | Comments(0)


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