猫額洞の日々

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2013年 12月 01日

森本哲郎「懐かしい『東京』を歩く」1/2

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 子どもの頃、郷土史を研究している老人が理解できなかった。
辛気くさそうで、何が楽しいんだろうと思って。
 子どもの目には老人に映るが、実際は40から50歳そこそこで
あろう、そんな彼らのファッションは、黒いベレ、黒ぶちの丸い
眼鏡、ウールのヴェストにループタイが覗き、ジャケットと太めの
ズボン、靴は編み上げ、そんなイメージがある。
 あくまでも1960年代、というより、昭和30年代の郷土史研究者
のスタイルである。

 子どもが大人になり、大人もなり果てて老人に至ると、何が彼らを
過去に向わせたか、よーくわかるようになる。持ち時間が短くなった
と気づいたとき、思いは後ろを向く。
 それは確実にあったのであるし、子どもの身体の続きである老いた
身体にもかつてと同じ思いはいまだ残る。そこから残りの生を始めよう
と思うのではないかしら。
 自分がいまここに在るのがどうしても納得できず、過去に惹かれる
子ども、というのもあるけれど、大抵は老いが過去へと向わせる。

 森本哲郎「懐かしい『東京』を歩く」は、初め「ぼくの東京夢華録」
と題され、1995年に新潮社から単行本で出版、2005年に「懐かしい
『東京』を歩く」と改題され、PHP文庫より出版された。
 森本哲郎は1925年生れ、1995年は70歳、2005年は80歳である。
過去へと向かうには充分な年齢だ。

 いわゆる実人生だけがひとの体験ではない。読んだ本の記憶も彼を
かたち作る。
 本の記憶や本から得た知識をからめながら、子どもの頃歩いた町を
半世紀を経てふたたび歩き、見る、東京エッセイ集だ。

     (PHP文庫 2005初 J)

(12月17日に続く~)





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by byogakudo | 2013-12-01 16:39 | 読書ノート | Comments(0)


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