2013年 12月 25日
11月に読んで以来のロバート・バーナードだが、こちらの方が 好きかしら。 D・H・ロレンスとアラン・シリトーの間をつなぐような、1930 年代の労働者階級出身の作家、ウォルター・メイチンは戦後すぐ 死亡し、忘れられていたが、80年代も近くなって復活の兆しを 見せる。 アメリカ人の研究者は、彼の前妻と後妻が同居する家に日参 して原稿や手紙の研究を重ねる。メイチン研究の第一人者になり、 帰国後は学会の大物になろうと野望に燃える。 遺言書で、前妻が原稿類を所有し、後妻が版権を所有している ので、老女ふたりは協議し、そりは合わないが怨讐を越えて同居 している。亡夫の著作の復刊や遺作の刊行が話題になり、今度は かなりの印税に恵まれそうである。子どもたちも、おこぼれに 目を光らせる。 家の周りにはロンドン大手紙の記者たちも集まり、スクープを 物せんと狙っている。 口の悪い前妻と仲良しの主人公、若い教師であるグレッグ・ホッキングと その女友だちを除く、登場人物ほぼ全員、野心に燃えたり、嫌みな人柄だ。 クリスティ風に村のうわさ話が乱舞する中、老女ふたりの住む家で火事が 起り、前妻が死亡する。火事の際、あわてて怪我をして煙に巻かれた事故死 とされるが、グレッグ・ホッキングは納得できず、独自の調査を進める。 ホッキングにしても小者観たっぷりだし、登場人物のいい加減さや感じの 悪さが遠慮なく描かれるけれど、完全な人間なんていやしないのだと、 作者は明るく肯定する。ここらもクリスティ風味である。 (HPB 1983初 帯 VJ無)
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by byogakudo
| 2013-12-25 10:37
| 読書ノート
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