猫額洞の日々

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2014年 01月 07日

斎藤美奈子「妊娠小説」読了

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 店に単行本があったと思うが、文庫版を手にして、ようやく読む。
汚染され続けてきたブンガク的読みの歴史に風穴を開ける、痛快評論。
明治以後の日本の小説を、ストーリー中に妊娠という出来事があるか
どうかで選び出し、近代日本文学史を再編成する荒技。清々しい読後感。

 たしかに恋人たちの間に起きる予期せぬ妊娠は、物語を進行させる動力
になる。男はウジウジと悩み、近代的自我の表明発露に、ぴったりの装置
と言えよう。よくある話ではあるが、背後に大きな物語を存在させることが
困難な日本文学にあっては、幾度となく繰り返されるテーマだ。

 自閉的なテーマとはいえ、作者や読者や作中の恋人たちは社会に生きて
いるのだから、優生保護法の変遷に目を配ることも忘れない。
 もう政治家を引退した村上正邦は、今でも中絶違法化を訴えているよう
だが、
< たとえば、<ママ! ママ!/ボクは、生れそこねた子供です>なんていう
 「詩」があったりする。以下<おいしいお乳も知らず/暖かい胸も知らず>とか、
 <ここはとても寒いの/ひとりでとても怖いの>といった調子のセンチメンタルな
 ことばが並ぶのだが、じつはこれこそ、くだんの名イデオローグ、村上議員が
 予算委員会で朗読した「詩」というものなのだ。『刑法第二一二条』と題された
 歌の二番の歌詞だという(ということはもちろん一番もあり、レコードにもなって
 いるのだそうだ)。ちなみに刑法第二一二条とは、あのなつかしい「堕胎罪(ゾンビ)」
 のことだ。>(『1 妊娠小説のあゆみ 変わりゆく妊娠小説』p94)


 (仮)EP-4と「モダンガール論」から3年余り、やっぱり<EP-4と「妊娠小説」に
発展すること>はできなんだ。腕がないなあ。

     (ちくま文庫 2003年5刷 J)





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by byogakudo | 2014-01-07 14:11 | 読書ノート | Comments(2)
Commented by saheizi-inokori at 2014-01-07 22:15
持っている小説ですが読んだ覚えがない。
怖いのですね、男には。
Commented by byogakudo at 2014-01-08 21:55
コワくはありませんよ! けらけら笑いながら読める、希有な文学史です。


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