2014年 01月 25日

トマス・チャステイン「パンドラの匣」読了

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 マックス・カウフマン・シリーズ第一作「パンドラの匣」、これが第一作
なら大評判も当然だ。

 元16分署にいた私立探偵スパナーが、保釈金を借りたまま逃げた男を
見つけ、護送しようとすると、ニューヨークで大きな犯罪を起こそうとして
いる連中の話を耳にしたから、自分を裁判所ではなく警察に連れて行って
くれと言われる。
 16分署署長のカウフマンは上司に報告し、何が起きるかわからないが、
テロ等の重大犯罪に備える緊急動員計画を出すよう指示される。
 その計画書の暗号名が「パンドラの匣」。

 パンドラの匣の中身は、メトロポリタン美術館から絵画を盗み出し、
金を払って買い戻させる犯罪である。
 美術にもたしなみのある知的でセンスのよい犯人が選んだのは、
ブリューゲル「獲り入れをする人々」、レンブラント「或る男の肖像」、
ピカソ「ガートルード・スタインの肖像」、モネ「サンタンドレのテラス」、
ルノアール「シャルパンティエ夫人とその子供たち」。
 犯人は、モネとルノアールは、ほんとは自分のものにしたいが、身代金が
そもそもの目的なので諦める。絵を傷つけないよう、細心の注意を払う
美術愛好者/犯罪者である。

 メトロポリタン美術館からの美術品強奪と犯人追跡場面は、ほとんど
「ダイハード」みたような展開を見せるが、大捕り物の合間に挟まれる
警察側・犯人側の日常的、私生活に属する描写がスパイスだ。

 カウフマン次席警視の愛人が気を利かせすぎて、肝心なときに彼の
ポケットベルが不通だったり、私立探偵スパナーが依頼された仕事が
じつはキャンセル事項だと後でわかったり、犯人を含めてみんな当てが
外れる、皮肉な結末である。
 犯人がすてきなので、なんとか成功させてあげたかったと読者に思わせる
ところが作者の腕だろう。

     (HPB 1978初 帯 VJ無)





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by byogakudo | 2014-01-25 14:50 | 読書ノート | Comments(0)


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