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猫額洞の日々

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2014年 02月 01日

鹿島茂「昭和怪優伝__帰ってきた昭和脇役名画館」もう少し

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 お正月に買った岡本綺堂「探偵夜話」(中公文庫)に挟まっていた
新刊案内を眺めていたら、鹿島茂の映画本が出ている。岸田森に
川地民夫、成田三樹夫...。もろ、好みのラインだ。しかし、鹿島茂の
映画本? 読みたいし、読めばきっと気に入るとわかっていても、値段に
気後れする。
 現代思想系文庫本が1000円台なのは納得している。諦めもする。
部数が多くないだろうし。
 だが、エンタテインメントに1000円以上を費やして新刊書店で買って
いいものかと、ひと月近く悩む。教養主義の名残が我ながら、いじましい。

 お師匠さんがいらした。「昭和怪優伝__帰ってきた昭和脇役名画館」
の話をしたら、やはり持っておいでだ。よかったよ、と仰る。決心がついた。
 決心するほどのことかと言われそうだが、緊縮財政中なので、踏切板が
必要なのだ。
 Sが阿佐ヶ谷方向に歩くという昨日、頼んだ。わたしは歯医者の椅子に
一時間半、坐ってなければならないので。

 歯医者を終え、がちがちに凝り固まった身体で読み始めると、もう読み
進めるしかない。
 前書きに当たる『開館の辞』で、鹿島茂の学生運動の挫折感とプログラム・
ピクチャー愛を知る。そういうひとでしたか。本のコレクターとばかり思っていた。
 コレクターはファナティックなものだけれど、プログラム・ピクチャーに対しても
コレクション意識が発動し、全作制覇の情熱に駆られて熱狂的に、東映ヤクザ映画、
日活ニュー・アクション、日活ロマンポルノを見まくった過去を持つひと、と知る。

 順番に従わず、フェイヴァリット・岸田森の項『第三回上映 孤高のドラキュラ
岸田森』から読む。先だって義母のTVで「血を吸う薔薇」を見た。ブラム・
ストーカーを強引に日本の土壌に移植した怪作だ。女優たちの衣装センスや
小物の選択がもう少し細やかだったらと、プログラム・ピクチャーに疎い感想
だけれど。

 岸田森を読んで一安心(?)してから第一回に戻り、あとは順々に読む。そうか、
プログラム・ピクチャーとは、
<「一本一本は愚作だが、何十本も見ると差異を楽しむことができるようになり、
 総体では傑作になる」というパラドックス>
(『第六回上映 横目な色悪 天地茂』 p149)をもつ映画なのか。量は質を決定する。
あたしは読んだ本の数も見た映画の数も少ないから、貧相なのね。

 反省しながらも作者のノリにつられて読む速度が速くなる。映画について書くと、
どうしてどの作家も情熱的になるんだろう。愛が読者に乗り移り、読者は見たこと
のない、これから先も見ることはないであろう映画を愛している自分に気がつく。
そういう情熱の書である。

     (中公文庫 2013初 帯 J)

(2月2日に続く~)





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by byogakudo | 2014-02-01 14:03 | 読書ノート | Comments(0)


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