2005年 12月 13日

「クールな男」読了

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 「見れる」「知れる」がどこに出ていたか思い出せない。もしそれらが
地の文だったら 昨日の感想はそのまま、会話文に使われていたなら 文章効果
ということになる。その場合は訂正します。

 日常と幻想とが地続きの小説だった。「壁抜け男」にしたって、そういえば
そうである。現場を発見された密夫が、なんとかこの場を逃れたいと願望したら
壁を通り抜けられたという話だった。呪文すら称えることなく。

 短篇集「クールな男」も同じような作りで、例えば「ぶりかえし」に於いては
一年を24ヶ月にする法案が国会で可決された途端、フランス国籍をもつ全員が
年齢を半減する。成人や老人は若返り、ヒロインである婚約したばかりの若い女性は
一気に9歳のこどもに戻ってしまい、それでも意識は18歳のまま。
 若くして結婚した夫婦たちも、10歳の身体で家族を養い 子育てをしなければ
ならない理不尽さに見舞われ、クライマックスでは、若返りを喜ぶ大人たち 対
こども時代に閉じ込められた若者たちとの市街戦に至る。まるで68年みたいだ。
 「エヴァンジル通り」の主人公はアラブだし、アクチュアルな問題がフランスでも
修正されることなく続いてきたのかという感想も浮かぶ。

 「エヴァンジル通り」の小さな界隈にしか生きられないアラブ人が、少し先の通りに
出ようとした時の手がかりのなさ・儚さの描写なぞ、とても実感的なファンタシーだ。

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by byogakudo | 2005-12-13 14:52 | 読書ノート | Comments(0)


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