2014年 04月 02日

ライオネル・デヴィッドスン「モルダウの黒い流れ」1/3

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 初めて読む作家かと思ったら「チェルシー連続殺人事件」の
作者だった。なあんだ。それならこれも好みだろう。

 わりと育ちのいい、イギリス人の父とチェコ出身の母を持つ青年が、
騙されて冷戦下のチェコにガラス製造の企業秘密を盗みに行くという
発端だが、ほんとに企業スパイなのか、まだ1/3くらいで無事に英国に
戻ってきたから、本当の謎はこれからだろう、たぶん。

 これが第一作らしいが、はらはらしない、ヒューマーのあるスパイ・
アクションなので、わたし向きだ。

 主人公がスパイもどきの行動を取るはめになったのは、彼の
「アメリカの伯父さん」願望を利用されたからだ。実際には
母方の「カナダの叔父さん」が死亡し、彼に遺産が残されたと
いう嘘にころりと騙され、脅されて、6歳まで過ごしたプラハに
行かされる。

 主人公の性格が頼りなくっていい。自分でも優柔不断だと判って
いて、ずるずるスパイ行為に引きずられるが、根が享楽的な彼の、
遺産が入ったと信じたときの逆上ぶりなど、ほほえましい。

 もうこれで、親譲りの貿易商社で飼い殺しにされなくていい、今の
恋人を愛しているけれど、結婚相手としてはもっとよく考えた方が
いいんじゃないか、ママもそうだけれど、彼女は自分の意志を押し
つけるからなあ__と思いながら翌日、彼女に会うとやっぱり好き、
結婚しようと言い出すし、彼女よりもっと愛しているようにも見える、
大好きな車(中古のMG)の借金をすぐ払う。

 スパイ・アクションのヒーローは大抵、人間離れした能力の持主だが、
我が主人公は、ごく人間的である。いよいよスパイ行為をやるときに
なると、すぐさま顔色が悪くなるのに、その夜に、彼より大柄で巨大な
胸が彼の眼の高さにあるような、チェコの女性ドライヴァーと以心伝心、
旅先の浮気までしでかすような、優柔不断故の無茶なところもある。
 さて、イギリスに戻って、どうなるのかな?

     (HPB 1961初 裸本)





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by byogakudo | 2014-04-02 22:10 | 読書ノート | Comments(0)


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