猫額洞の日々

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2014年 04月 27日

ジョナサン・ヴェイリン「火の湖(うみ)に眠る」読了

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(4月26日より続く)

 私立探偵ハリイ・ストウナーの友人、ロニー・ヤコフスキーは物語中の
現在時にはほとんど出て来ない。自殺を図ってハリイのアパートメントに
連れて来られたときだけが、唯一、現在形である。翌日には失踪し、
ロニーはかつての彼を知る様々なひとの記憶の中の" ロニー "像として
描かれる。

< 初めて会った時、ロニーは二十歳(はたち)のハンサムな若者だった。
 悲しげな目と薄い唇。ピーター・フォンダの黒髪・小型版といえなくも
 なかった。>(p21上段)と、ハリイに回想されるロニーの18年後は、
<私の記憶にある青年のころのロニーの、みすぼらしいつや消し版と
 いった風情だ。>(p27下段)

 女の子にもてたロニーは、彼女たちの記憶に居座り続けるが、男の
友人たちにとっても事情は同じだ。彼を思い出すと皆、かつての青春の
光に取りまかれ、ロニーを否定することは自分の過去を否定するに等しい
と、気がつく。

 チャーミングなルシファーであるロニー。彼と共に過ごした時間に厳しい
視線を注げるのは、麻薬使用は悪だとあの時期に主張していた、当時の
少数派であるハリイ・ストウナーだけだ。厳格な旧約の神みたようにふるまう
ハリイにしても、今に持ち込まれたロニーのトラブルの後始末を黙々と進める。

 現世で行える限りの裁きをもたらしたハリイだが、彼がつかの間愛し合った
ロニーの妻・カレンとの恋は、ロニーの死が決定的になったことで失われる。
 死が勝利する、影の地にいるルシファーは微笑みを浮かべたままだ。

     (HPB 1988初 帯 VJ無)





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by byogakudo | 2014-04-27 21:09 | 読書ノート | Comments(0)


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