2014年 05月 11日

その翌日

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 閉店から一夜明けた。まだ実感も感慨もなにも浮かばず、たぶん
全部の後始末が終わって、現状復帰させた空っぽの空間に立った
とき、ここから始めたのだと感じるかもしれない。

 どこで店をやろうと探していて、ここに決めたのは、モノクロームの
市松の床だった。ビニタイルではあっても、頭の中で映画「恐るべき
子供たち」のポールとエリザベートの室内に変換され、ここだとわかった。
 人通りがあるかとか、駅から近いかとか、そんなことは考えもしない。
当時住んでいた部屋からすぐで、部屋の延長として無理なく通えたから、
結果的に十余年続けられたのだろう。

 昨日のお客さまの中に若い女性があった。会計をされて、むかしの友人の
娘です、と名乗られた。十年の時間が凝縮して飛び去り、わたしは棚に
残っていた大和書房版・澁澤龍彦訳の「長靴をはいた猫」を取り出し、
 「これをお見せした途端、レジの前で読み出された、あの小学生の
お嬢さん?!」と小さく叫ぶ。
 彼女はあれ以来、ずっと本を読み続ける少女、そして今の若い女性に
なられた。

 思い出すと気が遠くなりそうだ。二、三日のうちに、鈴木創士氏に
ならって言えば、水星に出かける予定なので、そこでゆっくり思い出そう。





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by byogakudo | 2014-05-11 19:53 | 雑録 | Comments(0)


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