猫額洞の日々

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2014年 07月 04日

小島政二郎「天下一品 食いしん坊の記録」読了

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 そういえば店は止めたのだから、定休日というものもなく、
いつだってブログ日和(?)なのだった。

 実際に食べることは、大して関心のある問題ではないが、
食べ物について書かれたエッセイを読むことは、関心の対象
になる。
 小島政二郎「天下一品 食いしん坊の記録」は、食べ物に
ついて書きながら、友人たち、すなわち作家たちの話にスライド
していく辺りが楽しい。

 京都の「南一(なんいち)」という料理屋は、先代の死後、弟子と
娘とで跡を継いでいるが、客が減り苦戦しているようなので、小島
政二郎は京都に行く度に寄っている。

<どれもまずくはないが、学校の生徒で云うと、みんな及第点だが、
 私の経験で云うと、一(いっ)向面白くない生徒だ。
 [中略]
  私は文科の先生だったから、成績は悪くても、何か一芸に秀(ひい)
 でた生徒が欲しかった。実例を挙(あ)げれば、矢野目(やのめ)源一君
 という生徒なんか、出来はそうよくなかったと思うが、フランス語は
 天才的で、この人の訳したヴィヨンの訳を見て、帝大の教授が舌を
 巻いて驚いたという話が残っている。料理でも同じことだ。
  [略]
 全部及第点なのは当り前のこととして、何か一つか二つ、矢野目
 (やのめ)君のフランス語のようなものが私は欲しいのだ。
 [中略]
 現在の南一には、「これ」という一ト品がない。私は京都の人の薄情を
 口にしたが、よく考えて見ると、矢野目君のヴィヨンがなければ、客が
 来なくなるのは当り前だろう。>(p143)

 芥川たちの友人だった小島政二郎は1994年、満100歳で死去。
「天下一品 食いしん坊の記録」は84歳時の作。このときも相変わらず
こってりしたものが好き、だそうで、昔ちょっと思いついた三田文学=
カツ丼説を復活させたくなる。

     (河出文庫 2012初 J)





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by byogakudo | 2014-07-04 20:49 | 読書ノート | Comments(2)
Commented by saheizi-inokori at 2014-07-04 21:29
中学の時に読んだ「食いしん坊」、面白かったのは好かったのですが、あれからこういう世界に憧れるようになってしまった。
道を誤らせた憎いおっさんです。
Commented by byogakudo at 2014-07-05 20:51
中学生ですか!  中学のときは...さすがに食べ物エッセイにまで
手は出ませんでした。


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