猫額洞の日々

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2014年 07月 10日

マーク・プライヤー「古書店主」読了

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(~07月09日の続き)

 褒めて育てようという、新進作家養成プロジェクトの結果なのかなあ?

 物語の最後に、日本語訳で3頁を費やす「謝辞」がある。主人公の
造形に影響を及ぼした父に感謝、母や兄弟姉妹に感謝、作家を含む
友人たちへの感謝、編集者やエージェントへの感謝、図書館通いに
つき合ってくれた子どもたちへの感謝、そして扉に献辞が書かれて
いるが、糟糠の妻に最高の感謝が捧げられる。

 家族や肉親が好意的なのはわかるけれど、書くことのプロである作家の
友人や編集者・エージェントは誰ひとりとして、登場人物の出し入れの
不自然さが気にならなかったのだろうか。主人公の行動が描かれている
あいだ、彼のCIAの友人や、魅力的な女友だちは作者から忘れ去られて、
出番を待つ人形のように、舞台の書割りの裏にでも置かれているのかと
感じられるのだが、それはわたしが原文で読んでないからなのだろうか?

 伯爵令嬢である女友だちだが、前日(?)に銃撃され退院したばかり
なのに主人公の部屋に泊まり、自宅に戻れば父・伯爵が殺されている。
 彼女の身もまた危険だから、駐仏アメリカ大使館に身を隠すよう主人公に
勧められたのに、彼女はジャーナリスト魂の赴くところであろうか、現場に
出張る。
 館の伯爵の遺体は、もう警察の管轄だから、彼女が館に残ってもやることが
ないし、お葬式の手配とかも検死が終わってからだろうし、であってもねえ。
それに、故伯爵の忠実なショーファーは何をしてる? ちょうど休日で館に
いなかったの?
 無茶な展開であれ、文章が巧ければ勢いに乗せられてそれなりの納得も
するけれど、時間稼ぎにナレーションに頼る映画みたような安易さで、納得
できなんだ。

 伯爵家の過去(ヨーロッパの歴史を象徴的に示す)と、ユーロ圏の拡大に
連れて起きる問題とを絡め、大きな物語を書こうという意図があるとは認め
られるが、主人公を含めた全登場人物が平面的で、ご都合主義的なのは
困ったものだ。描写じゃなくて説明なの。

 シリーズ化されて3作目まで出ているらしい。腕が上がっていると嬉しい。
エラそーな言い方でごめんなさいね。

     (ハヤカワ文庫 2013初 J)





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by byogakudo | 2014-07-10 20:12 | 読書ノート | Comments(0)


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