2014年 08月 01日

ローレンス・ブロック「泥棒は深夜に徘徊する」読了

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 泥棒バーニイ・シリーズ最新作、といっても、原作は2004年刊、
日本語訳は2007年刊行の「泥棒は深夜に徘徊する」だが、もしか
してローレンス・ブロックはメタ・ミステリを試みているのだろうか?

 だってミステリにおいて偶然は御法度でしょ、ふつう? たまたま
通りがかって事件に巻きこまれる、というのは発端にだけ許される
ことで、偶然が多発する物語は、謎が合理的に解決されるミステリ
ではなく、ご都合主義の物語と、ふつうは見なされるだろう。
 ところが、このスタイルでも堂々とミステリにしてしまっている
ので、メタ・ミステリへの試みかと思ったのだ。

 古本屋兼泥棒のバーニイは、週末にお屋敷に侵入する予定がある
ので、まず下見。それは済んだのに、最近の欲求不満も手伝って?、
つい深夜の街を徘徊してバーニイ好みの建物、ブラウンストーンの
アパートメントに入ってみる。途中で住人が帰ってきて、図らずも
強姦事件の目撃者(ベッドの下に隠れていたので、声や物音しか
聞いていない。"聴撃者"というべきか?)になってしまい、可哀想な
被害者(たまたま彼の好みのタイプ)のために既に盗んでいたお金や
貴金属を返し、逃れ出るが、折悪しく近所で強盗殺人事件発生、街の
あちこちに設置された監視カメラに映ったバー二イは関与を疑われる。

 これだけでも十分な偶然の連続だけれど、被害者の女性とつき合う
ことになる(彼女が行きそうなバーにいたら、入ってきて意気投合!)
し、彼女の会社の同僚は、バーニイの心友、レズビアンのキャロリン
の新しい女友だちだとわかるし、ニューヨークが狭いのか、世界は、
ご近所にご近所が少しずつ重なり合ってできているのだから当然の
事態なのか、よく判らないけれど、多重偶然世界が記述される。

 この偶然性の多発は読者の現実の環境にまで影響して、昨日、
<エリス島の入国管理事務所のピアノの写真>と書いてから、
本の後半を読んでいたら、バーニイがローデンバーではなく
ローゼンバーグと間違われる箇所に来た。

< そう、実に多くの人々が聞きまちがえる。実際のところ、私は
 身内以外のローデンバーに会ったことがないのだが、この名前は
 過重労働で疲れ果てたエリス島の入国管理官の贈りものでは
 ないかと常々疑っている。>(p284下段)

 そういうメタ・ミステリなので(?)、長くなるのも必然、と
言えるか? もっといえば冗長ないし、文と文の連なりに緩みの
ようなものを感じもするのだが。ほら、映画監督やミュージシャン
が年をとると長ったらしい(と思わせる)映画を撮ったり、プレイが
遅くなったりするののミステリ版。

 失礼なことを言ってるけれど、もちろん十分楽しんだ。
 バーニイとキャロリンが気にいっているTV番組は「ザ・ホワイト
ハウス」と「LAW&ORDER性犯罪特捜班」、レズビアンのための
SNS<デート・ア・ダイク>に載せたキャロリンの自己紹介文には、
バーニイの手が入っている、とか。ちなみに、こんな感じの文章
__
<春向きの軽い交際相手をお探し? わたしは五フィート二インチ、
 あなた好みの眼。知的で陽気でチャーミング。久々に姿を見せた、
 L・L・ビーンとローラ・アシュレイの不倫の娘ってところかしら。
 好きなものはスコッチとニューヨーク。嫌いなものはソフトボール。
 猫は二匹までと決めてます。誰かとの関係が意味を持ちはじめると、
 いつも失恋かセックスレスで終わってしまうので、さほど深い意味
 のない関係というのはどう?>(p50下段=51上段)

     (HPB 2007初 帯 VJ)





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by byogakudo | 2014-08-01 20:06 | 読書ノート | Comments(0)


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