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猫額洞の日々

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2014年 08月 12日

森茉莉付近(33)鹿島茂「オール・アバウト・セックス」読了

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 20世紀末から21世紀初頭にかけて「週刊文春」に連載された
鹿島茂の<エロス関係の本だけを取り上げる書評>が2002年に
「文藝春秋」から単行本として刊行され、2005年に文春文庫に
なった。読んだのは、この文庫版の方で、「週刊文春」2001年
8月16・23日合併号の鼎談、『決定版 官能小説ガイド』が
付いている。

 メンバーは久世光彦・福田和也・鹿島茂で、それぞれがお薦めの
エロ本を持ち寄り、あれこれ横道に逸れながら話していく。

鹿島 ところで今回、僕が『赤い帽子の女』(作者不詳)を選んだのは、
 書いた人がわかっちゃったからなんです。芥川龍之介説もありました
 けど、これは絶対に芥川ではなくて、フランス文学者の辰野隆(ゆたか)!
 福田 辰野は、結構洒脱なエッセイを書いていますよね。
 鹿島 間違いないと思います。なぜかというと、文章に辰野さんのすべて
 の癖が出てるんですよ。それに辰野さんはすごい潔癖な人なんですが、
 著者も野外でドイツ人の娼婦と「立ちお○○こ」をするとき、ズボンが
 汚れるのを異常にいやがる。それにそもそもこの時代に「フランス語が
 できて」「ドイツに行くことができる」日本人なんて、すごく限られて
 いるけど、後年の辰野さんのエッセイを読むと、第一次世界大戦直後に
 ドイツに旅行をして、いかに楽しかったかということを書いているんです。
 久世 これは新発見だね。
 鹿島 ええ。それとフランス語が一言も分からない娼婦と、妙に言葉に
 こだわって、一語一語やり取りをする所なんて、いかにも辰野さんらしい。
 絶対とは言い切れないけど、文体を比較してみても、間違いないと思うなあ。
 福田 「芥川説」は何で出たんですかね?
 鹿島 カムフラージュじゃないかって気がするんですけどね。実際に文体も
 違うし、もし芥川だったら、赤い帽子の女と食べたフランス料理のメニュー
 の細部までは絶対に描けないと思います。
 久世 文体はいくら消そうとしても、かえって出るからね。
 鹿島 でも僕の説が合ってるとしたら、ほんと、辰野さんにとって大名誉
 だと思うね。
 久世 いやほんとに、この発見は登録すべきだね(笑)。[略]>(p239~240)

     (文春文庫 2005初 J)





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by byogakudo | 2014-08-12 17:53 | 森茉莉 | Comments(0)


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