猫額洞の日々

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2014年 08月 13日

ローレンス・ブロック「過去からの弔鐘(ちょうしょう)」読了

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 ようやくマット・スカダー初登場の「過去からの弔鐘(ちょうしょう)」
を読む。ローレンス・ブロックを読み出したのは、「八百万の死にざま」
からだったっけ? バーニイ・シリーズはその後だったと、頼りなくも
思う。

 非番時にいた(ただで酒が飲める)バーに二人組の強盗が入り、強盗
を追いかけて一人は殺したが、もう一人を撃った弾が跳ね、近くにいた
少女を結果的に殺してしまった事故・事件以来、警察を辞め離婚して
アルコール浸りになった元警官という設定は、やはりタッカー・コウ/
ミッチ・トビン由来だろう。
 ミッチ・トビンには彼を見放さない奥さんがいたが、マット・スカダー
のように安ホテル住まいのひとりものになったら、生活を規則正しくする
根っこを失う。
 強盗事件を解決したということで表彰され、少女を殺してしまった件
には何のおとがめもなし、だったのは、警察組織の論理では正しい判定
だが、個人の倫理としては納得できかねる。ずっと抱え込んでしまう
のも無理はないと、読者に感情移入させる主人公の設定だ。

 もうひとつ感情移入させるのが、マット・スカダーの常識人らしさの
折に触れての(軽い)強調だ。どんな組織でも多少のゆるみは暗黙の
了解で認め合っている方が、組織としてうまく行く。まして、時に命の
やり取りにつながる警察の仕事で、ひとりだけ堅物を通したりしたら、
チーム仕事などできない。
 だから、マット・スカダーはお目こぼしや援助を求めて、警官にただで
飲ませるバーではお金を払わないし、自分から賄賂を要求したりはしない
けれど、小額の賄賂が回ってきたら黙って受け取る。第一作から登場して
いるのをやっと知った高級娼婦のエレインだが、彼女とも持ちつ持たれつ
の関係で、仲良くしている。

 大抵のことは慣例に従うけれど、ただ一点、殺人に関してはシリアス、
という男を創り出し、ニューヨークの風景(と風俗)の中に立たせる。
 どんな陰惨なできごとが起ろうと、マットならこれ以上、人々を傷つけ
ない方法で解決してくれると、読者は信頼して読んでいく。

     (二見文庫 1987初 J)





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by byogakudo | 2014-08-13 16:11 | 読書ノート | Comments(0)


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