猫額洞の日々

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2014年 08月 16日

鹿島茂「パリの秘密」読了(1)

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 2003年から3年間、「東京新聞」に隔週連載されたコラムを
2006年に「中央公論社」で単行本化、2010年「中公文庫」に
なる。例によって文庫版で読む。

 連載中は隔週忘れずに楽しく読んだ覚えがあるのに、文庫で
再読したら、二つ三つしか記憶がない。そんなものか。

 エッフェル塔から話は始まるが、鹿島茂がエッフェル塔を見て
思い出すのは、同じ場所に建てられる予定だったが政治力の差
でエッフェル塔に負けて実現しなかった「太陽の塔」の幻影で
ある。
<世界中の人々の見果てぬ夢が集まり、ぶつかり合い、融合し、
 そして消えていったカオスの中から生まれた都市>(p10)パリ。
有名どころじゃないパリ、パリのかけらを集めた記憶の書だ。

 『「壁抜け男」という生き方』(p204)は、「東京新聞」で
読んだときに書いた(2005年12月12日)
 
 『洗濯船の興亡』(p90)を読んでいたら、ジョルジュ・シムノン
のメグレ警視シリーズにも洗濯船の話が出てきたっけ、と思い出す。
2006年12月24日から26日にかけて「メグレ夫人と公園の女」の
感想文を書いたが、12月25日付けにちょうどその洗濯船の件りが
出てくる。
 このときイメージできなくて困った洗濯船とは、

<文字通り、セーヌの土手に係留された屋根つき平底船で、船縁
 (ふなべり)に沿って洗濯台とベンチがずらりと並べられ、小柱で
 区画に区切られていた。自宅から汚れ物をかついできた女たちは
 船主にいくばくかの金をはらって区画を借り切ると、そこで汚れ物
 をセーヌの水に浸け、布地に灰をふりかけてから、これを棒でバン
 バンとたたくのである。同じセーヌの土手でも、日当たりがいい
 右岸に洗濯船は集中していた。>(p91)
 __大川だって夏の陽射しを避けるときは左岸、冬の陽光を求める
ときは右岸を歩く。

<十八世紀の末には八十隻の洗濯船がセーヌの土手を埋め尽くす
 ことに>(p91)なり、
<二階建てのタイプも登場する。二階には乾燥用の広い部屋がもうけ
 られ、女たちは洗い上げたばかりのシーツや下着をここで干すことが
 できたのである。>(p92)

 「メグレ夫人と公園の女」で、セーヌの土手に降りて洗うのかと
心配したが、土手に降りないですむ施設が洗濯船だ。しかし水を
渡る風は夏は涼しくても冬は凍える。冬でも2週間に一回、洗濯船に
行くという製本師の奥さんは、あるいは当時の女たちはすごい。それ
しかなければ、そうするものではあるけれど。

 ところで、シムノンの原作は49年の出版だが、鹿島茂によれば、
<二十世紀に入って、家庭用の上下水道が完備するようになると、
 不潔なセーヌの水を使う洗濯船の人気は急速に衰えていく。
  ナチス占領下の一九四二年、最後の洗濯船が廃船となり、パリ
 名物がまた一つ姿を消した。>(p92)と、ある。
 __ということは、「メグレ夫人と公園の女」は、戦前の話という
設定だったのだろうか? 手元にないので確認できない。

     (中公文庫 2010初 J)

8月17日に続く~





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by byogakudo | 2014-08-16 15:20 | 読書ノート | Comments(0)


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