猫額洞の日々

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2014年 08月 17日

鹿島茂「パリの秘密」読了(2)

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~8月16日より続く

 これは「東京新聞」夕刊連載時から覚えていたぞ、という
のが『段状建物会社の勝利』(p180)。
 大昔、近くを歩いたこともあったろうに、まるで気づかな
かった、怠惰ゆえに気づけなかったセットバック・スタイル
の建物だ。

 横道に逸れるけれど、ひどい怠け者で、「何々するために、
どこそこへ行く」のが苦手だ。70年のパリがそうで、ガイド
ブックの類いは参照しないし、調べようともしないので、
モロー美術館へは三度目の正直でやっと行けた。
 一度目は館内修理中、二度目は管理人が夏期休暇中、
三度目にようやく入れた。
 自分がねぐらとする近辺をうろついて出会う風景で満足して
しまう性向は、我ながらその向上心のなさに呆れるし、若くて
傲慢な奴とも思うけれど、なんというか怠惰なりの妙なスノビ
スムが働いていたような気がする。物見遊山や観光が苦手、
という怠け者に便利なスノビスム。


<モンパルナスのヴァヴァン通り二六番地に建つ真っ白いタイルの
 建物が目に入った。各階が少しずつセットバックしているおかげ
 で、ベランダに置かれている美しい緑が顔をのぞかせている。>
(p180)

<「段状建物会社」を創立した二人の建築家、アンリ・ソヴァージュと
 シャルル・サラザンがヴァヴァン通りに九階建てのタイル・アパルト
 マンの建築許可を求めたのは一九一二年六月のこと。
 [略]
  各階に段状にセットバックするこの建て方は、通りに日光が当たれば
 街路の衛生状態が改善されるとする当時の公衆衛生学の考え方を取り入れ
 たものだった。
 [略]
 建物は[中略]一九一四年五月に完成した。モダン・デザインの建物が
 勝利した最初の一つだった。>(p181)

 新聞で読んだ当時は、パソコンで画像検索してみようという知恵も
あまりなく(たぶん素材もそれほど上がってなかったのではないか?)、
文庫で読んで、やっと探してみることを思いつく。
 「段状建物会社」はフランス語で何というのか見当がつかないけれど、
アンリ・ソヴァージュなら、こんな綴りかと検索したら、どっさり出てきた。
動画まである、Henri Sauvage
画像は、Henri Sauvage architecte

 アール・ヌーヴォーからアール・デコにかけての建築家のようだ。
ル・コルビュジエ記念館を訪ねる『「住むための機械」に宿る精神」
の章もあるが、ごりごりのモダーン・アーキテクト、ル・コルビュジエ
にしたって、最初のころは、ほとんどアール・ヌーヴォーだったし。

 動けないのでweb徘徊していたら、「文象先生のころ 毛綱モンちゃん
のころ」(渡辺豊和 アセテート 2006初)という本を見つけた。
 建築家は名文家(過ぎることもある)揃いなので、これもきっと面白い
と直感するが、残念、売り切れだ。古本で買うには今の経済状態では
きつい。図書館にあるかなあ?

 徘徊中に見つけた「建築ノ虫」というサイトも面白かったので、
当ブログ右側のリンク欄に、ブックデザイナー・日下潤一氏のサイト
「PAPERWALL」とともに入れさせていただいた。

 単行本「パリの秘密」もそうかもしれないが、文庫版の左頁隅に
輪回しをする少女の像がパラパラ漫画の形で付けられている。
とても可愛らしい。

     (中公文庫 2010初 J)





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by byogakudo | 2014-08-17 14:41 | 読書ノート | Comments(2)
Commented by saheizi-inokori at 2014-08-17 17:50
「モンフォコーンの鼠」、これも19世紀パリの物語、鹿島が掌を指すがごときパリの真相ですね。
Commented by byogakudo at 2014-08-17 20:06
あっ、面白そうです! 風太郎系でしょうか?


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