猫額洞の日々

byogakudo.exblog.jp
ブログトップ
2014年 08月 21日

ローレンス・ブロック「倒錯の舞踏」1/3

e0030187_13142254.jpg












 多少なりとも発表された順番に読もうと思って、マット・スカダー・
シリーズ<倒錯三部作>の「倒錯の舞踏」到着を待っていた。

 <三部作>の1、「墓場への切符」は読んでいるから、せめて(?)
「倒錯の舞踏」、次いで「獣たちの墓」と読み進もう。初期の4作目、
「暗闇にひと突き」は一度手に入れたけれど、倉庫に長く保管されて
いたようで、触れるとダニ感に襲われるので再度注文し、未着だが、
これは後でいい。(眼光紙背に本の状態説明欄を読んでも、気に入ら
なければ返金しますの一言で片づけられてしまう、ときもある。)
 ところが「獣たちの墓」や次の「死者との誓い」は昨午後届いた
のに、肝心の「倒錯の舞踏」がなかなか着かなくって、順序よくの
決心がぐらつく。夜に近い夕方、やっと郵便受けに入っていた。

 ボクシングを見に行ったマット・スカダーが、客席になんとなく
見覚えのある男を見つける発端。あとで、以前たまたま見る羽目に
なったスナッフ・フィルムの男、殺人者ではないかと気がつく。

 これとは別の事件を頼まれる。ボクシングの試合を中継している
ケーブルテレビのプロデューサーが強盗に襲われ負傷、妻は強姦
されて殺された。妻の兄は、夫が計画して殺したと考え(警察も
そう見ているが証拠がない)、マットに調査を依頼する。陪審員を
満足させ得る証拠が欲しいのではなく、真実が知りたいだけ、と。

 ボストン出身のお金持ちの兄と故妹で、ゲイの兄は妹には知ら
せていなかったが、HIVを発症している。カボシ肉腫の紫斑が出て
いるけれど、今はもうしばらく生きられる可能性が出てきたような
時期だ。

 暗く陰惨な時代風俗の重苦しさを和らげるように、お金持ちの
意外な(でもないけれど)金銭感覚の細かさが描かれる。マットに
言われるままの金額の小切手を書き、レストラン兼酒場「アーム
ストロングの店」の勘定書にたっぷりチップを乗せて支払うのに、
二杯目の紅茶(アール・グレイ愛用!)の代金に疑問を持つ。

<「いつも不公平な気がするんですよ。コーヒーのおかわりは普通
 ただですよね。紅茶もお湯はただです。でもティー・バッグを頼むと、
 二杯分の料金を取られる。紅茶のほうがコーヒーより原価は安いのに」
 彼は溜息をついた。>(p36)

 そのときどき、折々の風俗情報(流行りの店やファッション、
飲食物など)を物語の中に忍ばせるのもエンタテインメントの
定石だが、趣味の佳さをさらりと挿入されると、読んでいて楽しい。
 ブロックの泥棒バーニイ・シリーズ、「泥棒はクロゼットの中」で
歯医者の治療が終わった翌日、朝食にだいおうのジャムを味わう場面
がある。
<そのジャムはスコットランドからの輸入品で、かなり高かった。私は、
 しゃれたラベルで八角形の壜にはいっているものは、なんでもいいもの
 だと思っている。だから、その考えがあてはまらないようなときでも、
 中身は義務的に使いきろうと心がける。>(p48上段)
(HPB 1980初 帯 VJ無)
 暗いシリーズでも明るいバーニイ・シリーズでも、都会的な軽薄さで
かつ趣味がいい、というのがローレンス・ブロックらしくて、いい。

     (二見文庫 2006年3版 J)

8月22日に続く~





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2014-08-21 15:30 | 読書ノート | Comments(0)


<< ローレンス・ブロック「倒錯の舞...      夏に殺(や)られる >>