猫額洞の日々

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2014年 08月 22日

ローレンス・ブロック「倒錯の舞踏」読了

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〜8月22日より続く

 警察や法律の力では退治できない悪に直面したマット・スカダーは
どうするか? 前作「墓場への切符」ではサイコ・キラーを殺すことで、
罪の対価としての罰を個人的に行使する。警察官でもなく許可証を持つ
私立探偵ですらない、一私人のマット・スカダーが、どんな資格で裁判官
兼刑罰の執行者足り得るか。リンチに走る暴徒と、どんな違いがあるか。

 傍目にはほとんど差異はない。ただ心の奥底を覗くと、暴徒は自らの正義
を頼んで、自分を疑うことがない。マットは自分もまた罪を犯すことを自覚
して、それでも敢えてやろうとする、その僅かで確実な姿勢の差が、読者の
共感を引き出す。いい気なひとり自警団と、言われたってしかたない部分が
あっても、ぎりぎりのところで、読者はマット・スカダーと思いを共有する。

 「倒錯の舞踏」でも、邪悪な犯人たちを処罰するために、自分は手を汚さず
にすむやり方を知りながら、自らの血で血を贖うことを選ぶ。

< 「[略]いずれにしろ、汚い仕事を他人任せにするということが、どうも
 しっくり来なかったんだ。たとえ彼らを死刑にできても、現実に自分に
 できることと言えば、彼らが吊るされるのを見に行くのが関の山だ__
 なんだかそんな気がしたのさ」>(p465)

 マネー・ローンダリング、スナッフ・フィルムに性倒錯、邪悪な茨が蔓延る
ニューヨーク・バビロン風景だが、大人の関係を保ち続けよう、互いに自立
した存在であり続けようとしながらも次の段階を望まないでもない、高級
娼婦・エレインと元アル中で元警官のマットとの恋愛場面が、抑制的である
故に切なくてきれいだ。

     (二見文庫 2006年3版 J)





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by byogakudo | 2014-08-22 16:24 | 読書ノート | Comments(0)


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