猫額洞の日々

byogakudo.exblog.jp
ブログトップ
2014年 09月 26日

シオドア・スタージョン「輝く断片」再読・読了

e0030187_1926362.jpg












 表題作『輝く断片』は、フランケンシュタインの怪物の、狂おしい
愛の物語だ。

 醜い肉体、知能も低い。この18年、デパートの夜間の掃除夫として
働いているが、53歳になる今まで、友だちひとりできなかった。
 ひとりぼっちの初老の男が、仕事帰りに重傷を負った若い女を見つける。
ひとり暮らしのアパートに連れ帰り、大出血している彼女を救う。
 <おれが全部なおしてやる。>(p328)

 器具の熱湯消毒、サルファ剤、ガーゼ。まともな家庭の医学だ。
 太腿の動脈出血を抑えるのは、昔おぼえた銀線で鎖を作る技術であり、
胸の長いカミソリ傷を縫うときは、鶏の串刺しの要領を思い出し、銀の
ブローチ・ピンの列を作る。彼女を救う家庭の医学ならぬ家庭の手術の
シーンは、細かくリアリスティックな描写が続き、白熱した切迫感が胸に
迫る。もし見ている人があったなら、フランケンシュタインの怪物が花嫁を
創造する場面と間違えそうだ。

 誰からも、母親からも愛されず、どこに行っても馬鹿にされ続けた人生で、
初めて出逢った感情生活の対象である。彼は彼女を保護するために生きる。
愛することで愛されなかった過去を補おうとする。

< 女が起きだすようになると、彼は赤い部屋着をおみやげに買ってきたが、
 彼女がベッドから出ることは許さなかった。おみやげは頻繁に買ってきた。
 水にひたした花が一週間ももつガラス球、生きた亀が二ひき入ったプラス
 チックの金魚鉢、<ロッカバイ・ベイビー>のオルゴールを仕込んだ薄青い
 ウサギのおもちゃ、目のさめるような朱色の口紅などなど。>(p348)

 ジャンクな彩りのうつくしさ! シオドア・スタージョンとジョゼフ・
コーネルの世界観は近い。

 フランケンシュタインの怪物は花嫁が欲しかったのではない、少女に
向かって一輪の花を捧げたかっただけなのに、回復した彼女は彼の人生
から出て行こうとして、悲劇の大詰めを迎える。

     (河出書房新社 2005初 帯 J)





..... Ads by Excite ........
 
[PR]

by byogakudo | 2014-09-26 21:50 | 読書ノート | Comments(0)


<< 猪野健治「日本の右翼」をまだ諦...      「吉田調書」と宅間正夫 >>