2014年 10月 10日

ローレンス・ブロック「殺し屋」1/3

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 近くのBOで108円の「殺し屋 最後の仕事」を手に入れ、面白そうなので
第一作から読むことにして、あまぞんで注文したら、2作目、3作目が先に
届き、最初の作「殺し屋」を昨日やっと入手。

 ところで108円で買っておきながら言うのもなんだけど、「殺し屋 最後の
仕事」のジャケットは一見きれいだが、小口に水気によるシワが見られ、開く
と明らかに水のついた手で触れた痕がある。この状態でまず半額とつけたのが、
少し不可解。最初から108円コースだと思うけれど、そうだったら、あまりBO
に行かないわたしの手に入る機会がもっと下がっていただろうから、小姑的
チェックは慎むべきである。まだ古本屋気分が抜けきらない?

 どうも近頃、前置きが長い。ひまなのと、Mac2台が今のところ使えている
せいである。店で使っていたデスクトップがそろそろ怪しいので、ノート型を
ほぼ独占して、何度も書き直したりしていられるのも、風前の灯である。

 というところで、ローレンス・ブロック「殺し屋」。原題は"HIT MAN"。
初めは"Keller's Greatest Hits"とするつもりだったらしい。ケラーは、
主人公の殺し屋の名前で、第二作「殺しのリスト」は"HIT LIST"、第三作
「殺しのパレード」が"HIT PARADE"、第四作「殺し屋 最後の仕事」は
"HIT AND RUN"だ。音楽やベースボールにからめた原題を日本語にするのは
難しいが、原題を活かす方法は何かなかったかしら? ちょっともったいない
気がする。

 短篇連作集で、読んでいくうちに殺し屋ケラー(Keller,the Killer という一文字
ちがいの洒落によるネーミングが、いかにもローレンス・ブロックらしい。)の
背景や人柄が少しずつ明らかにされるが、物語はいきなり、何の説明もなく始まる。
 頼まれた仕事をしに飛行機やレンタカーで地方都市に向かい、モーテルに泊まる。
殺しのターゲットの住居を偵察するが、この街で家を買って暮したらどんな感じか
なあ、などと想像しながらである。(ニューヨーク以外の街では暮せないのは、
ローレンス・ブロックの他の主人公たち、マット・スカダーやバーニイ・ローデンバー
と同じなのに。)

 泥棒バーニイにしても侵入先で、ここに住んだらどんな毎日だろうかと空想する癖
があるが、泥棒よりもっと緊張するはずの殺し屋なのに、このまま行くとウォルター・
ミティみたいな話になるのかと思わせるほど、現場の環境に想像力を働かせる様子や、
殺し以前の/以外の記憶やエピソードが、淡々と異常に穏やかで抑制的、切り詰めた
語り口で描かれる、オフビート・ミステリだ。

 語り口の巧さ(の目立ち方)と言ったら、これがいちばんではないかしら? バーニイ・
シリーズはわざと迂回して回りくどく(あたかも下手な作家みたように?)書き、マット・
スカダーはアル中という前提故に基調はパセティックであるが、スタイリッシュという
点で、ケラー・シリーズはいちばんだろう。技巧的な作家が遠慮なく巧さを披露している。

 ある経緯でオーストラリアン・キャトル・ドッグを飼い始めた一人暮らしのケラーは
気がつくと、犬のネルスン相手に来し方やあれこれを喋るようになる。人間相手には
寡黙なままだけれど。そんな彼に、殺しの依頼を伝える女性、ドットが注意する。

< 「[略]とにかくあなたは人間が変わってきた。だいたい犬なんか飼いはじめたのが
 そうよ。そのうち鯨を救えなんて言いだして、孤児を引き取ったりなんかするように
 なるんじゃない? 気をつけたほうがいいと思う」
  「そんなことはない」とケラーは言った。しかし、帰りの電車の中で気づくと、
 ドットに言われたことを考えていた。彼女の言ったことはあたっているのだろうか?
  そうは思えなかった。といって、確信もなかった。ネルスンに相談しなければ。
 ケラーはそう思った。>(p165)

 バーニイ・ローデンバーは悪友(?)の刑事から「ローデンバー夫人の坊ちゃん」
呼ばわりされるが、父方の話は出てこない。マット・スカダーの父も、彼が十代初め
のころ死んでいる。ケラーの父親は誰だかわからない。
 ローレンス・ブロックのシリーズ・ヒーローたちは、アメリカ文化の原則、厳父と息子
とのエディプス的死闘をあらかじめ免責された、無垢な天使的存在なのかしら?
 だから彼らはアメリカの伝統的(共和党的、今ならティー・パーティ的?)価値観から
遠く、バーニイの心友はレズビアンのキャロリンであり、マットが結婚するのは元・娼婦
のエレインである。ケラーの女性観はまだよくわからない。

     (ローレンス・ブロック/田口俊樹 訳「殺し屋」 二見文庫 1998初 J)

10月11日に続く~





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by byogakudo | 2014-10-10 21:22 | 読書ノート | Comments(0)


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