猫額洞の日々

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2014年 10月 13日

ローレンス・ブロック「殺しのリスト」2/3強+矢野誠一「戸板康二の歳月」

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 殺し屋シリーズ第二作「殺しのリスト」("HIT LIST")は、殺し屋ケラーの
仕事ぶりを連作短篇ではなく長篇で描く。ケラーは殺人請負業をあっさりと
こなしていく。殺人シーンはごく短く、殺しと殺しの間のケラーの私生活描写
のほうが分量としては多い。

 切手コレクターぶりに拍車がかかり、仕事先にもカタログを持って行ったりする。
目的地に着いたからって、すぐさま仕事にかかれるものでもない。街の様子を調べ
たり、襲うチャンスを窺って時間がかかることもあるから、そんな待ち時間を潰す
ためにも、コレクションの充実のためにも、持っている切手と未所有の切手に印を
つけたカタログは旅の必須携帯品である。
 鉛筆で印をつけ頁の端を折った目録を持って、古書展に通っていたころを思い出す。
始めて間もないころは二人がかりで目録をチェックし、何を注文するか検討していた。
わりと注文が当たったのは、わたしの名前で頼んだからだろうか? 女の客は少数派
だから大事にしよう、当ててやろうと思われたのかもしれない。実際は業者なので
申訳なかったけれど。

 古本と同じように切手蒐集も年齢層が高い。
<どうやれば若い人たちをこの趣味に引き込むことができるか、という議論が熱く
 交わされていた。コンピューターや、"ニンテンドー"やMTV全盛の今の世の中、
 切手蒐集に関心を持つ少年少女の数は明らかに減ってきている。子供たちが
 切手を蒐集しなくなったら、次の世代では大人の蒐集家がいなくなってしまう。>
(p128)

 ケラー自身は、生きてる間に洪水が起きようが(つまり蒐集した切手の価値が
下がろうが上がろうが)、どうでもいいと考えている。自分のコレクションが増えて
ゆくのを楽しむだけだから、コレクションの付加価値である資産価値に興味はない。
 若いコレクターを増やすために、切手を発行するアメリカ郵政省が漫画のキャラクター
切手を発行する風潮についても批判的だ。

<子供の頃、彼が無心に切手を集められたのは、切手の蒐集が子供向けのものでは
 なく、明らかに大人向けの趣味で、そのことが面白かったからだ。子供向けの遊びと
 思ったら、初めから手を出してはいなかっただろう。>(p129)

 そして子供の頃、「裸のマハ」切手を手に入れたとき、を思い出す。
<彼もまた拡大鏡でつぶさに吟味し、切手がもっと大きくて、拡大鏡の倍率がもっと
 あればいいのに、と心底思ったクチだった。>(p128)
 だから、
<子供たちの関心を惹きたいのであれば、初めから裸の夫人を与えてやることだ
 __ケラーはそう思った。>(p129)

     (ローレンス・ブロック/田口俊樹 訳「殺しのリスト」 二見文庫 2002初 帯 J)

10月14日に続く~

 先日読んだ矢野誠一「戸板康二の歳月」については、
梟通信〜ホンの戯言 葬儀は安上がりにすべきだ 矢野誠一「戸板康二の歳月」
をお読みください。関心を持ったごく一部だけ取り上げる、このブログのような
ことはなく、どんな内容の本であるか、丁寧に分かりやすく書かれているブック
ガイドです。
 (そうか、わたしは木を見て森どころか表皮の一片ばかり見てしまうクチなのか!)





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by byogakudo | 2014-10-13 21:48 | 読書ノート | Comments(2)
Commented by saheizi-inokori at 2014-10-14 09:37
関心を持った部分をこのように興味深く書かれるから読んでみたくなります。
ケラーともしばらくご無沙汰してます、会いたくなりました。
Commented by byogakudo at 2014-10-14 19:37
ケラー、いいですね。ぜひご再会を。
興味を惹いた部分だけ書き残すと、面白かった映画のワンシーンだけ
覚えているのと同じことになり、しばらくするとどんな話だったか忘れて
しまいます...。こんなことでいいのでしょうか? 再読は楽しめますが。


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