2014年 10月 23日

ポール・エングルマン「死球(デッドボール)」読了

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~10月22日より続く

 野球ファンだったらなあ、もっと楽しかったかもしれない。実際に野球
をやる人たちで9人、監督その他のスタッフで数名、球団オーナーやコミッ
ショナー代行、大金持ちのベーブ・ルース狂と手下たち、主人公に相棒に
主人公の恋人に、他にも大勢、登場する。やや多すぎる。それでもサッカー
界をミステリの舞台にすると関係者はもっと増えるだろうから(?)、これ
くらいですんだのか?

 いまベーブ・ルースを検索してやっと、物語が1961年に設定されている訳が
わかった。この年にロジャー・マリスがベーブ・ルースの年間ホームラン記録を
破ったからだ。そういうことだったのか。
 1983年原作刊行なのに61年の話にしたのは、軽ハードボイルド・タッチの
のんきなベースボール・ミステリを存在させる必要条件としての、近過去設定
だと思っていたのだ。野球がスポーツの王様だったころ、嫌煙権が地上を覆う
ことなく、みんなが煙草を吸い酒をあおる状況を描いても不自然にならない
近過去・1961年、かと思っていた野球知らず、である。

 物語の中でベーブ・ルースの記録に迫るのがマービン・ワレスという左翼手、
彼が所属するニューヨークの架空の球団名がジェンツなのは、「紳士たれ」が
モットーのヤンキースに由来している、ということにも、いま気づいた。読み
終わってから前提に気がつくようでは、読み手として問題がある、と思う。
 ジェンツ・オーナーの最終的行為なぞ、文字通りジェントルなのだ。

 もちろん野球好きでなくても面白がれる。ベーブ・ルースの記録が破られそうに
なって、あわててルース時代の試合数の範囲内で、という枠を持ち出したコミッショ
ナー代行のスピーチは、さながら、団菊じじいである。

<「モーリー・ウィルスはタイ・カップの記録を破れやせんよ、[中略]。マービン・
 ワレスだってベーブ・ルースの記録を破れやせん」
 [略]
  「人間の格だよ」胸をそらしていう。自分にもその格があるといいたげだ。
 「わしはベーブとタイ・カップがプレーするのをこの目で見とる。彼らには
 格があった」
 [略]
 「品格の問題なんだ。わしは野球の伝統を守る責任を負っとる。ホームラン
 記録は伝統の最たるものだ。だからわしはきちんとするんだ」>(p207)

     (ポール・エングルマン/大貫昇 訳「死球(デッドボール)」
     サンケイ文庫 1986初 J)


 品格がないので、SMバーの領収書が政治活動費として計上されていた
ニュースを喜ぶ。閣僚の首をすげ替えたばっかりなのに。
 昔ながらの政治とカネの問題で、適当に入閣させたビッチが安倍晋三内閣
を去り、靖国フェチのビッチが残る。

 憲法の問題や秘密保護法、共謀罪、靖国、沖縄の基地、それらを議論する
ことによってでは安倍晋三政権が倒せない現状を、忌々しく思うが、それでも
倒せないよりましだ。
 もしこれで倒せたとして、また根本的問題の先送りになるのだが。誰かが統治
してくれて、自分に災いが及ばないなら__できれば、おこぼれが欲しい__
誰だって構わないとする、昔ながらの日本人風景...。





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by byogakudo | 2014-10-23 19:53 | 読書ノート | Comments(0)


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