猫額洞の日々

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2014年 11月 06日

秋尾沙戸子「ワシントンハイツ GHQが東京に刻んだ戦後」半分弱

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 動けるようになったので昼間、得意とはいえない役所関係事項を片づける
ために、おととい、今日と動く。あの手の日本語はわたくしの最も苦手とする
ところのものでありまして、移動時間・待ち時間も含めて、心身が疲れる。

 でも治療中はそもそも、役所関係のことを処理すると考えただけで、頭が
混乱し、できない!と悲鳴を上げ、棚上げしていた。
 家から持って行くものと、役所でもらうべき書類、それを持ってまた別の
セクションに行って、と考えるだけで、順序がごちゃごちゃになりそうで、
それ以上考えられなくなる。たんに解きほぐしてやればいいことが、固まり
のまま目の前にでんと置かれて、手がつけられない。そこまで頭がヘバって
いた。
 いやだけれどやろうとする元気が出たのは、回復途上にあるからだ。

~11月04日より続く

 『第五章 オキュパイド・ジャパン』では食糧不足、栄養不足に苦しむ敗戦国・
国民にララ物資などが贈られ、子どもたちに給食で栄養補給させようとする
話が出てくる中に、

< <当時、首相(引用者注・吉田茂)を含めた多くの日本人は、身長が低い
 ことにきわめて敏感であった。首相はまわりの人と較(くら)べても小柄で、
 背丈はせいぜい五フィート(引用者注・約百五十二センチ)にも満たなかった。
 首相は、[中略]適切な量のタンパク質を摂取すれば[中略]外国人と同程度
 の身長になるであろうと聞かされて、学校給食プログラムの熱烈な支持者と
 なった。>>(p161)

 2012年9月8日〜10月6日まで放映されたNHKドラマスペシャル「負けて、
勝つ〜戦後を創った男・吉田茂〜」に於いて、身長184cmの渡辺謙に152cm
の吉田茂を演じさせたのは、故・吉田茂の霊を慰め、「日本を取り戻す」という
プロパガンダを込めたのであろう。
 民主党・野田佳彦(馬鹿なんだから)政権が去り、第2次安倍内閣の発足が
2012年12月26日であることと無関係とは思えないキャスティングだ。政権
交代を見越して、公共放送側から政権へのすり寄りがあったことを示す、と解釈
する。

 『第六章 かくて女性たちの視線を』では、大急ぎで新憲法が作られた理由や
作成プロセスが語られる。日本を実際に占領していたのはアメリカだが、連合国
には英国とソ連がいて、
<ドイツ分割同様、日本も各連合国担当の地域へ分割することを強硬に主張して
 いた>(p170)ので、マッカーサーが急がせたのだ。

 理想に燃えるニュー・ディーラーたち・民政局が憲法を作る。ニューディーラーの
ひとりは九条に関して懐疑的だったが、早くから日本の非軍事化を決めていた
ワシントンがマッカーサーに命じ、マッカーサーが部下に命じた。

 真珠湾攻撃の直後から、アメリカは日本占領プロセスを準備していた! 戦後、
日本と中国のどちらを資本主義国として発展させるか、という論議もしている。

 アメリカ政府に加えて、アメリカの陸軍や海軍も占領に関して一家言(?)あり、
思惑が交錯する。それにドイツ占領との絡みもあって、ニューディール・カラーが
鮮明な憲法になったようであるが、占領軍内部でも対立がある。参謀二部の
チャールズ・ウィロビー(後にフランコ将軍の顧問になる反共主義者)は反ニュー
ディールの筆頭であり、吉田茂とウマが合う。

 GHQ版憲法は、ニューディーラーたちに憲法のプロがいなかったこと、大急ぎで
作られたことを持って、日本の改憲論者たちは素人案と馬鹿にするが、日本案も、
委員長の松本烝治は商法の専門家であって憲法のプロではない。
 どうも負けたことがよく分かってなくて(分かりたくなかったのだろう、と
わたしは考える)マイナー・チェンジで通用するとナメてかかった(著者は
そんな言葉遣いはしないが、わたしが要約すると、こうなる)憲法案を出して
きた。

 若手ニューディーラーたちによる日本国憲法は、徹底した情報管理下で作成された。
<何か秘密めいたことが起きていたと感じて探りを入れたものの、諜報(ちょうほう)
 活動が得意なウィロビーもまた、その情報を手にできないままだった。知っていれば、
 懇意(こんい)にしていた白洲(しらす)次郎経由で外務大臣・吉田茂の耳に入った
 はずだった。>(p189)

 いちばんの若手のひとりであり、女性であるベアテ・シロタ・ゴードンは、少女のころ
戦前の日本に暮らし、日本の女に人権が存在しなかった事例をよく知るので、女性の
権利を多く憲法に書き入れ、ことごとく削除されるが、

< 「[略]ジェネラル・マッカーサーは、占領政策の最初に婦人の選挙権の授与を
 進めたように、女性の解放を望んでおられる。[以下略]」>(p196)この一言で、
婚姻に関する第二十四条が残った。マッカーサーが女性の参政権を主張したのは
彼がフェミニズムを信奉していたからではなく、
<婦人が政治に口を出せば、戦争抑止につながると考えたからに違いない。日本の
 非軍事化に有効な策として、女性の一票が彼の頭に浮かんだのだろう。>(p191)

 自分がニューディールの子どもであることがよく分かった章である。できるだけ全員の
公平を望むのは、これが子どものころ染みついた価値観だからだ。だって飢えてるひと
の目の前で食事したいものだろうか? いやじゃない? 分かち合いたいと思うだろう。

 <第二十四条 1 婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、[以下略]>(p197)が、
ゲイ同士の結婚ができないことの根拠とされているようだが、両性には男性と女性
が含まれるから、その組み合わせは男性と女性、男性と男性、女性と女性、の三通りである。
なんらゲイの婚姻を妨げるものではない、と考える。

     (秋尾沙戸子「ワシントンハイツ GHQが東京に刻んだ戦後」
     新潮文庫 2009初 J)

11月07日に続く~





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by byogakudo | 2014-11-06 23:17 | 読書ノート | Comments(0)


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