2014年 11月 26日

平山盧江「つめびき」3/4

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~11月25日より続く

 人情ものが苦手なので、気のいいだけの芸者の一生小説だったら
退屈だが、と懸念したけれど、祈れば叶うこともある。プロレタリア
小説には進まないが、何にも知らない少女が周囲から学んで、ひとと
して芸者として成長する教養小説になって行く。"芸者の一生"小説
だけでなく"芸者経済小説"でもある。

 第二章 『糸みち』では、半年前に、お酌になったとき、芸者屋
から実家に100円支払われたその後、の話が出る。

 これは契約金というより前払金だから、芸者を止めるに当たって
借金100円+利子+違約金=三百何十円を返済しなければならない。
 客が芸者を身請けすると高くつくが、親許身請けの形をとっても
これだけかかる。身請け処理をしてくれた待合「うす墨」にもお礼
をする。
 親切な客は500円くれたので、お酌・やや子こと、おみよの実家に
7、80円残った。つまり、100円の借金は半年後に420円から430円
払って帳消しになった。

 第三章『縁』には、
<日露戦争以来、無やみに広くつかはれるやうになつた言葉>
(p83)として「独占する」という言葉を少女・おみよが使うシーンが
あるし、
<日露戦争が終つてたつた三年足らずではあるが>(p78)とある
ので、小説は1908年(明治41年)ころに時代設定されていると思う
が、この時代だって税制も税務署もあっただろう。芸者屋や待合の
税金は、どのように徴収されていたのかしら?

 少女・おみよの兄の仕事場を作るのにかかった資金が100円、
大事に使おうと箪笥預金した7、80円は一枚減り、二枚減りして
いるうちに底をつく(ここら、とても人ごとではないリアリティ
がある)。8ヶ月後、おみよは再び芸者に出る。いつまでも実家に
いる訳に行かないので。

 実家もお金に縁がないが、近所はどこでも同じ風なのを見て
おみよは、
< みんなが金で苦労をしてゐる、ともいへるし、金のために
 みんながうろついたりまごついたりしてゐるともいへる、たか
 猪の絵を印刷した紙片一枚のために、人間はだれもかれも猪の
 やうに駆けずりまはつてゐるんだ。
  (お金つて、妙なものだわ)>(p51 『糸みち』)と思う。

 その前に、親切な客に言われたように、お嫁に行こうかとも考えてみたが
しかし、兄嫁と兄の関係を見たり、芸はあるが酒飲みで独身を通す三味線の
師匠(元・旗本の娘)を見たりしているうちに、芸で身を立てようと思う。

 芸者に戻る前に、お金を出してくれた、親切な客に断りを入れる義理がある。
 会いに行くと客は、自分が幼い頃に両親を亡くしているので、やや子/おみよ
の親孝行に、ほだされたからだ言う。鋳物工場が100円で建つときの500円を、
役所勤めの身で出せるのは、どの程度の地位にいるのだろう? 汚職なんぞして
なければよいが、まっすぐに純情な、いい人・キャラのようだ。

 さて、再度のお勤めにも経済問題が出てくる。100円の借金に対して350円
かもっと払っているのに、二度目のデビューには<「同盟を衝く」>問題が
発生するそうな。
 というところで、この件は明日。

     (平山盧江「つめびき」 住吉書店 1952初 J)

11月27日に続く~





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by byogakudo | 2014-11-26 22:08 | 読書ノート | Comments(0)


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