猫額洞の日々

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2014年 12月 11日

「アタシ、アタシ詐欺」は存在しない

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 母方の叔母と年に一、二回、長電話する。彼女は敗戦時のティー
ネイジャー。女性は最高齢24歳前に結婚し、家庭の人になるべき
宿命をもつ時代に結婚せず(第二次大戦のせいで、彼女の世代の
男たちは殆どみんな、死者である)、仕事を続け、定年を迎え、
元気な引退生活者になった。旅行が好きで、来年はキューバに行く、
という。姪とちがって活動的だ。

 叔母はイデオロギッシュではないが、独身で会社員生活を続けた
ということは、男社会とつき合い続けたということである。男女差別に
身をさらし続けてきたので、性差別には敏感になる。

 彼女が先日『はやぶさ2』のTV番組を見ていたら、どこかの小学校か
中学校の混声合唱団が出てきて、歌を歌う。男生徒が前に並び、女生徒
がその後ろに並んでいる様子を見て、
 「変わってないのね、と思った」という。

 出席簿は、今はどうなっているのだろう? 五十音順であっても、
男児の名前が終わってから、女児を五十音順に呼ぶのだろうか? 
 そんな些細なことが気になるのか、という反応は、男社会に生きる
男の反応であり、無自覚に男社会に生きる女の反応だ。目に見えて
いるのに、無視・無反応なのは、鈍感ということである。

 「女」に関する細かい言い換えは、性差別の分かりやすい例だ。
 政治的に正しい言い方では「女性」であり、彼女が犯罪に関ると「女」
と呼ばれ、いちだんと貶められる。これは「男性」でも犯罪者・犯罪
容疑者は「男」扱いになることに等しいので、性差別ではなく、共同体
からの追放を意味するか。

 一般的な「女性」系に、次に年齢差別が発生する。「女性」はあくまでも
一般的な性的欲望の対象年齢(不妊治療せずに妊娠できる生殖可能年齢、
というべきか)に相当し、性的指向は様々なれど、一般的な欲望の対象の
年齢を越えれば、「婦人」になる。「ご婦人」と敬して遠ざける呼称も
たまに使われる。出世魚じゃあるまいし。

 今の日本語だと、中高年男性、50歳前後から上の「男性」による「婦人」
使用を耳にしたり目にしたりする。彼らの日本語力の敏感さが「女性」と
「婦人」の細やかな使い分けをさせるのだろうが、新たに年齢差別を発生
させていることには鈍感である。

 若さが殊に女性に求められる資質だが、老齢は男女を問わず、弱点と
思われがちだ。生産に携わらない年齢層は、たとえ彼らがかつてどれだけ
仕事をしていようと、今や無駄飯食いなので、年齢差別の対象になる。
 お年寄りをいたわるという善意に発する行為も、根底にある年齢差別意識
を忘れるべきではないだろう。優しさは罠だ。

 デパートなどでは肌着と呼ばれるようだが、男性用下着が「紳士下着」や
「紳士肌着」、女性用は「婦人下着」「婦人肌着」になるのは、「紳士」と
「婦人」ではジャンル分け基準がちがう。変だと思わないのかしら?
 でも、ジェンツとレイディーズも変だから、「男性用」「女性用」下着
ないし肌着でいいのではないだろうか。


 「女のひとも悪いんじゃない? 男の子を産んでおけば、将来は安心だって
意識がどこかに残ってるんじゃない? その証拠に、『オレ、オレ詐欺」は
あっても、『アタシ、アタシ詐欺』はないでしょう?」、叔母の達見である。

 「アタシだけど、ママ、あのね...」と詐欺を働くのは難しい。オレ、オレ詐欺が
出始めたころであったとしても、「誰です?」と即座に電話を切られただろう。

 日本の男は自分と等位置に立つ女を必要としない。むしろ敬遠する方が
多いだろう。性的対象にした女にもすぐ、母性を求め、代理母親を無意識に
期待する。
 この記述を文字通りに敷衍すると、日本の男は字義通りの mother fucker
ってことになるけれど、母性崇拝観念やそれ故の禁忌ではなく、胎内回帰
したい、甘やかされていた幼児期に戻りたいという欲望である。
 日本の女もまた、男の無意識的欲望や期待を、こちらも無意識裡に
キャッチし、期待に応えることが多い。期待に応えた方が、男社会で
生きやすいと、本能的に知っているから。
 両者相俟ってのDVの原理だ。やれやれ。

 叔母とのお喋りは、明治以来の近代化が消化(昇華)しきれてないから、
個的な関係でも、社会的関係に於いても、相変わらずな馴れ合い状況が
続いているのだろう、と一応、結論した。





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by byogakudo | 2014-12-11 21:27 | 雑録 | Comments(2)
Commented by saheizi-inokori at 2014-12-12 10:40
せんじつ読んだ戯曲に「女言葉の命令語はない」というセリフ(女性ですが、たとえば夫妻のことを妻夫といいかえる)がありました。
Commented by byogakudo at 2014-12-12 13:38
 「破壊せよ、と彼女は言った」のですが、たしかに口語形
では男口調で言うしかありませんね。
 古文にも無知ですが、平安朝に貴族であった女性は、
どんな口調で命令したのでしょうか? もしかして、
男性と同じ言葉だったのでしょうか?


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