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猫額洞の日々

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2014年 12月 18日

ローレンス・ブロック「砕かれた街」<下>も読了

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~12月17日より続く

 これも一部分ではあるが、「ラ・ロンド」形式と呼べなくもないか?
小説のメインにいるのが美人でセクシーな画廊オーナー。磁力をもつ
ヒロインに引かれて男たちが集まり、彼らの中でも関係が始まったり
するから。

 いや、彼女は成功の途についた作家と対になる存在だ。キングと
クイーンのようなふたりを囲んで、彼らの知人、友人、そして犯人が
ニューヨークという宮廷でロンドを踊る。

 ヒロインがボディー・ピアスをすることで、セックスによる自己
表現を開始したり、作家が成功していく段階を丁寧に描いたり、
各人のエピソード(というよりシークエンスか?)が細やかに
書かれている。
 各シークエンスないしエピソードを、もう少し刈り込んで短く
した方が効果的に思えるのだが、作者としてはどのプロセスも
端折りたくないだろう、というのも何となく分かる。
 でも、たっぷりしてすばらしい、というには冗漫だと思う。
傷ついたニューヨークへの愛が書かせた長篇だ。嫌いじゃないし、
読んでる間、面白かったけれど。

 「砕かれた街」の原題は、"SMALL TOWN"。上巻扉裏にジョン・
ガンサーの言葉が引用されている。
<ニューヨーク市は[中略]現代文明の悲惨さと豪華さの両方を併せ
 持つ究極の顕現であり、合衆国のマケドニアである。大都会の定義に
 合致するかどうか、どれほど厳格なテストにも合格する__眠らない
 市(まち)だ。それが雨ともなれば、スモール・タウンにさま変わり。>

     (ローレンス・ブロック/田口俊樹 訳「砕かれた街」<下>
     二見文庫 2004初 J)







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by byogakudo | 2014-12-18 20:37 | 読書ノート | Comments(0)


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