2015年 01月 12日

ジョー・ゴアズ「路上の事件」読了

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~1月9日より続く

 始まりが"路上"スタイルだったので、主人公の移動に連れて背後の
風景が移り変わるように、新たな登場人物が次々に現れる連作なのか
と思っていたら、後半、主人公はサンフランシスコの探偵事務所に就職
する、(作者の)ハメットへの敬愛を込めて。

 仕事であちこち聞き込みに動くことはするけれど、サンフランシスコ
に腰を落ち着けたところで、前半に顔を出した人々が終結し、物語は
教養小説の肌合いを保ちつつハードボイルド・ミステリの割合を高めて
行く。
 作者の懐の深さだろうか、二つの要素が無理なくブレンドされている。
おまけにエンディングは、アメリカ映画でおなじみの父親殺しの物語に
着地するではないか。
 生物学的父ではないが、大人の男として描かれる、探偵事務所の所長
の死後、主人公はひとりで事務所を切り盛りしようとする。そこで物語が
終わる。エディプス物語をくっつけないでも、教養小説は書けると思う
けれど、アメリカンな教養小説で、ハードボイルド・ミステリでもある場合、
こういう展開になるかしら。

 アメリカの1953年の夏からの約一年間が舞台である。あちこちに当時の
風俗が挟み込まれていて、それも楽しい。
 主人公のノートルダム大学時代の友人がタリアセン(!)に就職が決まり、
出発する前に、主人公とその恋人を誘って行くのが、ワッツ・タワーである。
(p289~290)
 カリフォルニア名物のカルト教会のエピソードも、自然に物語の中に
組み込まれるし、ジャズ・クラブ<セイ・ホエン>の広告板"ビッグ・ジェイ・
マクニーリー"の前では、
<縞模様のジャージーセーターに男物のピージャケットをはおった
 灰色の髪の女が、ポスターを見つめながらビートに合わせて両脚を
 軽くたたいていた。
  「彼はけっこううまいのかい?」とダンク[注:紹介が遅くなった
 けれど主人公である]は彼女に訊いた。
 [中略]
  「チェット・ベイカーだってこのセイ・ホエンでデビューしたん
 だから。彼は戦時中プレシディオ駐屯地に配属されていて、チャーリー・
 パーカーがトランペットを必要としたの。ここの連中はみんなうまいわ」>
(p450~451)

 この会話の後、クラブからハリー・ザ・ヒップスターというサックス吹きが
出てきて、吹きながらバスに乗り込む。バンドはサックス抜きで演奏を続け、
主人公・ダンクが戻りかけると、
<一台のタクシーがとまってハリー・ザ・ヒップスターが依然サックスを吹き
 ながら車から出、歩道を横切って<セイ・ホエン>のなかに消えた。彼は
 いなくなっていたあいだ、ずっと演奏しどおしだったのだ。なんとも、
 この町はすてきだ、とダンクは思った。>(p451~452)
__このエピソードはローレンス・ブロックの何かでも似たような話があった
気がするけれど、実話なのか都市伝説なのかしら?

     (ジョー・ゴアズ/坂本憲一 訳「路上の事件」 
     扶桑社ミステリー文庫 2007初 J)    





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by byogakudo | 2015-01-12 17:39 | 読書ノート | Comments(0)


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