2015年 01月 26日

佐藤春夫「小説永井荷風伝 他三篇」全部読了+P・G・ウッドハウス「ジーヴズの事件簿 才智縦横」も

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~1月25日より続く

 佐藤春夫を読んでいる途中に、P・G・ウッドハウス「ジーヴズの事件簿
才智縦横」も読んでいた。単行本で読んでいたから再読だけれど、いい塩梅
に忘れていて、今回も楽しかった。やっぱりジーヴズがポジ版、ピンター+
ロージー+ダーク・ボガード「召使」がネガ版に思える。(ああ、「できごと」
がまた観たい!)

 「小説永井荷風伝 他三篇」の「他三篇」の二篇目、「永井荷風__その
境涯と芸術__」の『十二』にある「雨瀟瀟」の分析がすてき!
 「雨瀟瀟」がそもそもすばらしいが、一見、淡彩な書簡体小説が、いかに
複雑巧妙な仕組みをもつかが丁寧に語られる。

<何事も云わず語らず、[中略]あとは万事想像せよと突放している。
 全文はこの想像を誘うだけの材料を何不足なく順序よく排列している
 に過ぎない。掬するに余りある余情を組み合わせて好きなようにこの
 小説を組み立てたがよいと読者に求めている。言は短く意は長い所以
 である。>(p285)

 描写を抑えて効果を上げる例として、彩戔堂(さいせんどう[戔の字が
出ない])の建物の描写について__
<最初から話題にのぼって来るこの重要な建物は、堂号の説明の
 ついでにほんのあらましの想像のつく程度に手紙のなかで判る外は
 遂に一度も描かれる事もない。そうして今に一度は必ずこの物数奇
 を凝した建物がもっと作の焦点となって大写しにされるであろうという
 予想をものの見事に外して、いよいよその段取になって来たと思うと
 読者はやっと彩戔堂の門前に導かれるだけで
 [中略]
 読者の好奇心はせいぜい昂められさんざんじらされた末にも堂のなか
 へはどうしても一歩も入れられないばかりか[以下略]>(p283~284)
__さすが建築ファンタシー作家、佐藤春夫である。
 
 「小説永井荷風伝」の『第八章 近世艶隠者(やさいんじゃ)』の偏奇館
描写の細かいことも嬉しかった。

     (佐藤春夫「小説永井荷風伝 他三篇」 岩波文庫 2009初 J)





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by byogakudo | 2015-01-26 21:08 | 読書ノート | Comments(0)


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