猫額洞の日々

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2015年 03月 06日

E・C・R・ロラック「悪魔と警視庁」読了

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 ロラック。カタカナではなく、Loracと、英語のままで覚えないと、
ロラックだっけ、ラロックだっけ、と分からなくなる。LとRが混じった
単語は、とても発音しづらいのだけれど、わたしが外国語を発することは
まずないから、目と手でLoracと覚えよう。

 巻末の森英俊氏の解説に依ると、E. C. R. Loracは、Edith Caroline
Rivettのペンネームで、名前の頭文字を順に並べてE. C. R. 、Loracは、
Carolの転倒だそうだ。おまけに別名義、Carol Carnac(ミステリ用)と、
Carol Rivett(ジュヴナイル用)もある。
 今の目で見ると、性差を隠した、名前が頭文字のミステリ作家は、
すなわち女性作家ということになるが。

 <検索ウィンドウに「Lorac」「Carnac」と打ちこみ、すばらしい書影の
 数々を味わっていただきたい。>(p296)とあるので、指示通り打ちこんで
みたら、なるほど、どれもすてきだ。

 1938年刊行の「悪魔と警視庁」は、濃い夜霧のロンドンで仮装パーティが
行なわれ、メフィストフェレスの扮装をした死体が、警視庁のマクドナルド
首席警部の車から発見される、という派手なオープニング。続いてパーティの
主宰者、イギリス人の父と中国人の母を持つエキセントリックな有名女性宅を
訪れてパーティの様子を聞くのだが、女性宅の室内装飾に見られるシノワズリ
描写や、オリエンタリズムの定番(表情が読めない東洋的な女性)表現が嬉しく、
じゃあ、耽美的でスノッブなミステリかといえば、ちっとも。

 マクドナルド首席警部は地道に捜査を重ね、観察に基づくインスピレーションも
取り入れた仮説を立て推理する、本格ミステリであり、メフィストフェレスの死体の、
<「年齢を三十九歳か四十歳だと仮定すると、"戦争根絶のための戦い"(第一次
 大戦を指す)が終わったときには二十歳(はたち)ぐらいか。当時浴びた榴散弾の
 破片が体内に残っているかもしれない」>(p19)
という表現や、夜の河岸に屯していた目撃者(元インテリらしい言葉遣い、今は
アル中の浮浪者)とのやり取りなど、第二次大戦前夜の風俗小説としての面白さも
楽しめる。派手な設定なのに、けばけばしさからは遠い落ち着き方がいい。

     (E・C・R・ロラック/藤村裕美 訳「悪魔と警視庁」
     創元推理文庫 2013初 J)

[同日 追記]
 2007年3月6日付け当ブログは、<「死のチェックメイト」読了>。
だからBO棚で「ロラック」を見つけて、なにか記憶を刺激されたのだ。





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by byogakudo | 2015-03-06 23:36 | 読書ノート | Comments(0)


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