猫額洞の日々

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2015年 03月 08日

劇団フーダニット「殺人お知らせ申し上げます」/船堀というところへ行った

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~3月7日の続き

 劇団フーダニット 第14回公演「殺人お知らせ申し上げます」を観に、
船堀というところへ行った。船堀に対してなんだかつれない(?)言い方
だが、都営地下鉄新宿線・船堀駅下車、駅のすぐ前にある「タワーホール
船堀 小ホール」に行って観て帰ってきたので、こういう言い方になった。

 ミステリを専門とする演劇集団で、年に一度の公演がもう14回目。普段は
演劇の仕事に携わっていない人々のユニットであっても14年続けば、それは
プロフェッショナルな仕事ではないか。

 マティネに行った。12pm開場、12:30開演。開演時刻が近づくに連れ、
客席が埋まって行く。定員300名だが、200人は入っていそうだ。

 クリスティのミス・マープルもの「予告殺人」を脚色した作品だ。映画なら、
いくらでもフラッシュバックを挿入して背景情報を伝えられるが、演劇が現前
させるのは現在形だけなので、多くの登場人物の背景はもっぱら台詞で語る
しかない。
 本格ミステリは映画であっても状況説明に手間取り、もたつきやすい。映画が
得意とし、成功するミステリはサスペンス系あるいはハードボイルド系だろう。
 そんな困難が演劇空間では、いかに克服され、さらには活かされているか?
興味を持ちながら観ていた。

 予告殺人が発生する前半部は、原作より登場人物を減らしてあるそうだが、
それでもやはり多少長い。交わされる台詞の中で事情を語らないと、観客に
必要な情報が伝わらないのだから、しかたがない。
 ただ、観客の殆どがミステリ・ファンであろうし、原作を読んでいなくても
クリスティの何かは読んでいるだろうから、パターン分析ができる、これは
二つで一組を成す作りであろうと。

 田舎の屋敷に住む姉には死んだ妹がいるが、姉妹の友人だった女性が同居
しているので、まず中年女性二人で一組。屋敷に滞在する親戚__兄と妹の
若い一組。もう一人、屋敷に下宿する若い美貌の女性は、離れて住む子どもが
いるので、これも一組と考えてよいだろうか?
 友人として屋敷を訪ねてくる母と独身の息子の一組、事件解決にやってきた
クラドック警部とメローズ巡査部長の一組。単独者は、難民だったメイドと、
ミス・マープルの二人だけ。前者はイギリス社会の外部に在り、後者は内部に
在りながら外の目を持つ。ついに結婚して家庭をつくることがなかった女性の、
アウトサイドした眼差しである。

 舞台装置からも二つで一組が読み取られる。この舞台装置がすてきだった。
 近頃のステージは低く作られているので、全体が見られるよう、少し後ろ目に
席をとった。

 中央部が客席側に張り出し、両端が引っ込んだ舞台だ。居間の設定で、
すべてはここで語られ、行なわれる。
 低いコーヒーテーブルが少し、曲げ木の椅子が何脚も置かれ、下手奥に
書割りの本棚、その前に長椅子、さらに前端に電話とその台。書割りの本棚は
遠近上、低めにしかも斜めにカットして描かれているので、役者の出入りに
頭が見える(が気にならない)。斜めのカットは絵巻物の雲形と考えてもいい
かしら、下手には二階への階段や裏口があるという設定だから?

 真中に二つの(!)ドア(どちらも可動)がある壁の一部が建つ。二つの部屋を
一つにした、という台詞通り、壁の真中上に桁の名残に見える凸部があり、下に
暖炉がある。暖炉には羊飼いの(?)少年だったかの置物、これは寝室にある羊飼い
の少女とペアだ。

 上手には飲み物などを置くカウンター、手前に揺り椅子など。上手には書割りが
ないので、登場人物の出入りが丸見えであり、それが効果的に使われる。怒った
メイドが足音も高く玄関に向かうときなど、黒幕の前を上手に進むだけだが、
玄関ホールや扉、さらに庭へと通じるのが視える。

 メイドは迫害妄想の強い外国人であり、怒りっぽく、まだ英語が拙いという性格
設定なので、ギクシャクと動き、妙に明晰に発声する。他の演技者はあまり芝居
がからず自然な発声や動きをとるので、これも彼女の外部性を強め、また舞台に
アクセントをつける。
 ミス・マープルは老婦人のイメージが強いので、この舞台ではずいぶん活発に
動くと思ったが、これはTVドラマに影響された偏見(?)だろう。ミス・マープル
とて中年の未婚婦人から初老の、さらに老・ミス・マープルになったのである。
 ミス・マープルはあまり衣装替えの感じがなかったが、他の女優陣は細やかに
着替える。昼間の服、宵にはドレッシーに、喪服に準ずる服と__休憩を挟んだ
第二幕では、もう一つの殺人が起きるので。

 女優たちを引き立てるために(?)、男優陣は同じ衣装で通す。女性たちのドレス
を際立たせるために、パーティに出席する男性たちの服が黒と白に限られている
ように。

 舞台は暗転を多用してシーンの移り変わりを表す。音響も、時刻を知らせる時計の
チャイム、大きすぎない音楽や効果音など、細やかである。

 事件は解決した。尋問するクラドック警部につき従うメローズ巡査部長は、いつ
台詞を喋るのかと期待させながら、ついに一言も発しなかった。サンペンスフル
である。

     (劇団フーダニット 第14回公演「殺人お知らせ申し上げます」
     アガサ・クリスティ原作「予告殺人」より
     脚色 レスリー・ダーボン/訳 大江麻理子/演出 松坂晴恵
     2015年3月8日 於:タワーホール船堀 小ホール)

3月10日に続く~





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by byogakudo | 2015-03-08 21:41 | アート | Comments(0)


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