猫額洞の日々

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2015年 04月 04日

ハル「伯母殺人事件」をあきらめて小林信彦「和菓子屋の息子」に進む

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 そういえば「伯母殺人事件」は、むかし一度読みかけて止めた
ことがあるのを思い出した。なにかどこかしら合わない点がある
ようで、それが何であるかを知るためには全部読まなければなら
ないけれど、人生は短く、未知の本はたくさん。

 で、小林信彦「和菓子の息子」に行く。タイトルが「和菓子
の息子」でなくてほっとする。「屋」が蔑称で、「店」が公式名称
扱いされている風潮には我慢ならない。
 「八百屋お七」を「青果店お七」に変えかねないからなあ、油断
は禁物なの。

 昨日の「東京新聞」朝刊にも、不思議な日本語センスがあった。
28面、<焙煎コーヒー薫る街 清澄白河 集まる「サードウエーブ」>
という記事だ。都の現代美術館付近に倉庫を改装したカフェなどが
増えているそうで、オークランド創業の「ブルーボトルコーヒー」なる
チェーン店の広報の引用だが、

< 実はブルーボトルの成長の陰には、日本の喫茶店文化の研究が
 あった。「コーヒーに対する真剣さ、気遣い、抜け目のない姿勢」
 (広報)だ。コーヒー豆の産地でない日本の喫茶店は長らく、焙煎
 や抽出の技術に情熱を傾けてきた。>

 全文が紹介されてないので誤解してしまうのかもしれないが、
<抜け目のない>は、何かを誰かを悪く言うときに使う表現では
ないか。それともこれは原文の"smart"か何かを、悪気はなく
日本語訳しただけ、なのか?

 同日4面にも、不思議な日本語があった。
 <東北復興日記133 都内に福島県民の拠点>という記事だ。
NPO主宰者による記述だが、
< 昨年八月に「福島県南相馬発 坪倉正治先生のよくわかる
 放射線教室」の日本語版初版を二万冊作製して、三週間で
 増刷になったことがありました。これは市井の皆さまが
 本当の情報を欲しいと思っていることの表れではないか、
 と感じています。>

 <市井>+<皆さま>の結合が分からない。わたしの日本語感覚が時代と
ズレていて軋むのか? 元々ミスフィットなのが、ますます、こうるさい
老人になっちまって、E・ブログでよく読まれているらしいヘイトスピーチ
系のブログを流し読みしたら、気持が悪くなった。世の中、こんなに悪意
が満ちているのか。自分を肯定するために、自分より低い位置にある(と
勝手に見なす)他者を叩くのは、弱虫のしでかすことではなかったか。
 いや、弱いものいじめではない、権力を持つ"マスゴミ"を批判(?)して
いると、ヘイトスピーチ・サイドは言う。
 敵は"リベラル"。しゃらくせえ、うぜえと、「です・ます体」で罵倒する、
正義は我に在るとばかりに嵩にかかって。

 安倍晋三・一派は、この種の人々に支えられている。貧乏が彼らを生み
出すのかと思ってきたが、金銭的な貧困だけでなく、居場所のない人々の
港としてのヘイトスピーチ集団、という捉え方もある。
 かつては天皇を頂点とする神国・日本に帰属しているというフィク
ションを作り、敗戦後は経済成長神話にすがり、オウム真理教に逃れた
人々は異常者であると括り...__そもそも地上に居場所があると信じる
根拠はどこにあるのか。居心地の悪さが常態であり、多少なりとも地上と
和解する(拒否形であったとしても)試みがアートではなかったか。

 原発から生まれた電力を使い、沖縄に米軍基地を押しつけて生きてきた
ひとりなので、何も言う資格はないかもしれないが、資格はなくとも権利は
あるだろう。
 官房長官・菅義偉が沖縄にやっと行った。何を考えながら国立沖縄戦没者
墓苑に献花したのか(献花する資格があるのか?)
 何度、東京に来ても内閣の誰も会おうとしなかった翁長雄志・沖縄県知事と
明日会うそうだが、会って何を言うつもりだろう。
 「会いました、"丁寧に"ご説明いたしました、以上です」とでも言うのだろうか。
安倍晋三の決め台詞、何でも「"丁寧に"ご説明」と言っておけば、言霊の力で、
そのうち実質もできてくる、とでも信心しているのだろう。


 和菓子屋の息子・小林信彦の生家の構造や町内の説明が、若い読者のため
もあって、それこそ丁寧だが、階段を上がって二階の作りを言う前に、

< 薄暗い踊り場で__といっても、これ、<踊る場所>じゃないですよ、
 <階段の途中の足を休める場所>です__>(p28)
と、ギャグ半分の説明があって、そこから大仰に言えば日本語センスの変遷
について感想を述べたくなり、言葉を自己宣伝と、他者の遮断のためにだけ
使おうとする、安倍晋三の類いに異を唱えなくっちゃ、と思った次第。
 何を言っても聞く耳がない、耳に不自由さのある連中は、黙っていると信認
されたと勘違いするから、それはちがうと言い続けよう。

     (小林信彦「和菓子屋の息子_ある自伝的試み_」 新潮文庫 1996初 J)

4月7日に続く~





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by byogakudo | 2015-04-04 21:03 | 読書ノート | Comments(0)


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