2015年 05月 04日

久が原へ!(「昭和のくらし博物館」)

e0030187_11334078.jpg












 昨日は思い立ったが吉日、JR五反田から東急池上線で久が原を
目指した。Sは、久が原のどこを一応の目当てにするのか懸念して
いたけれど、わたしは暢気なもの。
 以前、買取に伺ってすてきな住宅地だった__でも住所も、駅の
どちら側だったかも覚えていない!__の一点のみで決行しようと
する。古い住宅の建替えで、いずこも同じ新建材住宅ばかり、な風景
に成り果てていたとしても、つまらなかったらつまらない散歩になる
だけの話で、というより、そもそもなんにも考えずただ、"久が原"に
行きたい。

 久が原駅の踏切を渡った側のほうが、より古めかしい商店街なので、
こちらにする。この時点で、かつての買取先の方向なのかどうか、もう
分からない。何かの指針がないと、と用心深いSの指示に従い、コンヴィ
ニエンスストアで取りあえず多摩川の方角を聞く。
 「大田区のほう? 世田谷区のほう?」と逆に問い返されても分から
ないから、ここも取りあえず、大田区のほうを教えてもらう。左手に
進めばいいようだ。

 あとはいつもの、犬も歩けば棒に当たる方式だ。曲がり角にくる度に、
なんとなくこっち、次の道は、こっちかなと歩いて行く。非常に暑い。

 「鵜の木八幡」を過ぎて南久が原2丁目、うつくしいヴァーミリオン・
サンド色の二階建て木造モルタルアパートメント「明光荘」に出会う。
「ラリーズ」のベースライン部分のみ、みたいな音が聴こえてきた。
 次に、おしゃもじを祀った小さな社。道路際にあり、大木に守られる
ように在る小さな社で、ご神体(?)の青い絵柄の陶器のおしゃもじの
足下に、木のおしゃもじが何本か並んでいる。

 さらに進む。terrain vague な草むら。脇のフェンスに矢印して、
昭和のくらし博物館」の案内板がある。ここだったのか。
 目指して歩いてきた訳ではなくても必要なものには出会う、という
一例。

 門を入ると左手に受付があり、若い女性(たぶんヴォランティアの
人々で運営されている空間だろう)から、好きなように見て回って、
但し写真は外観だけ(子どもたちの夏休みの宿題なら内部撮影も可)
と、伝えられる。

 よくぞ、ありきたりな普通の住まい(二階建て木造住宅)が、くらしを
形づくる細々としたモノとともに保存されたことだ! あとでもう一人の
ヴォランティアらしい女性の説明を聞くと、机の引出しを開けると覗く、
昔のキャラメルの箱や鉛筆や富山の置き薬やは、コレクターから借りて
展示されているようだが、新設のハコモノ博物館ではなく、実際に住んで
暮らしたお家ごと博物館になったおかげで、モノとその使われ方の様子が
強く印象づけられる、近過去・考古学博物館になっている。この日常性・
具体性があるから、戦争は平凡な日々を奪う行為だと自然に延長線上に
浮かび上がり理解する、コンセプチュアルな展示である。

 義母を連れて行けたら、懐かしさのあまり叫び出しそうな空間だけれど、
東京スタンダードな急階段はもう登れないだろうし、東京の公共交通は、
いまだ南北の連絡が悪いから、ここは無理か。

 見学を終えるとお茶とお菓子が振舞われる。この日はドクダミ茶と抹茶
カステラだった。柄の部分がプラスティックの、これも昔、見覚えのある
小さなフォークが添えられていた。

 2:30pm、去る。(12:30pmに地下鉄に乗り中野坂上で乗り換え、新宿で
JRに乗り換え、五反田で東急池上線に乗り換え、1:20pm、久が原着。)
 まだ日ざかり。日ざかりで思い出した、吉田健一訳のエリザベス・ボウエン
「日ざかり」を復刊してくれないか! 新訳を無視するような失礼な願いだが、
吉田健一のクセが読みたくって。

 JUNXが池上線沿線なのを思い出して電話してみる。居心地がよくて3:30から
6:15pmまでお邪魔してしまった。
 むかしむかし、友人宅を訪ねるときは大抵、電話で都合を聞くことさえあまり
しないで、いるかなあと思いながら訪ねることを、互いにやっていた。お喋りしたり
黙っていたり、無為な時間がただ過ぎて行った、あちこちの部屋で。
 佐々木邦のエッセイだったか、かなり遠くの下宿に住む友人宅を徒歩で訪ねて、
不在ならまた歩いて帰ってくることが書かれていたが、1970年代から80年代初め
まで、携帯電話が席巻する前は、友人同士の訪問は、戦前とそんなに違わなかった
ようだ。
 
 彼女はわたしやSより若いが、先だっての展覧会のとき、ようやく年齢を知った。
 そのとき、風景が共有できるのは1946年から1961年までに生まれた人々では
ないか、と思ったのだ、Sやわたしにとっての風景だが。1980年以後、風景は
それまでと違ってしまった。街も田舎町もすべてが郊外化に押し流される。





..... Ads by Excite ........
 
[PR]

by byogakudo | 2015-05-04 19:11 | 雑録 | Comments(0)


<< 鈴木創士氏のコラム「第62回 ...      佐多稲子「私の東京地図」読了 >>