2015年 05月 11日

レス・ロバーツ/安倍昭至 訳「無限の猿」読了

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 ひとが何か書いたとして、自費出版なら別だが、誰か第三者、
編集者なり翻訳者なりがいて目を通し、これなら売れるだろう、
いや、売行きはあまり期待できなくとも出版すべき価値が見出さ
れた後、著作物は本として公になる。

 翻訳ものは少なくとも予め、翻訳者と編集者のふたりがゴーサインを
出して出版されるから、本国での出版よりさらにフィルターの目が細かく
なり、ヒット率も上がっている筈であるが、ひとは神ではない。読み違い
だって起きる。読者にできるのは、ともかく読むこと、だ。数を読めば
カンも働くようになる(筈だ)し、これこそ自分のために書かれたと信じて
しまうような作品にめぐり会うことだってある。サラ・コードウェルや
ジョージ・バクストは、そうやって出会ってきたのだがしかし、毎回、
これこそって訳には行かない。
 野球の打者だって3割打てばすばらしい選手、いわんや翻訳ミステリ
においてをや。

 帯に<第一回私立探偵小説コンテスト最優秀作品>と謳われたレス・
ロバーツ「無限の猿」だけれど、残念ながらわたしにはヒットしなくって。
なんというか、メタ・ハードボイルド・ミステリで、ハンサムだがあまり
売れない役者が(どういう訓練を経たのか知らないが)私立探偵事務所
を構え、仕事をしている。

 主人公も、彼が恋する依頼人も魅力的な美男美女だと、作者は述べ、
作中の彼らも思っているようだが、読者であるわたしはそれに対して
懐疑的である。困ったものだ。役者を主人公にしたので、彼がよく口に
するアイドル、ハメットやチャンドラーの描くハードボイルド・ヒーロー
像を演じたがってるだけじゃないかと、メタ・ミステリ的に解釈するのだ。
 そつなく書かれているけれど、魅力が伝わらないヒーロー...。困っちゃう。

     (レス・ロバーツ/安倍昭至 訳「無限の猿」 HPB 1990初 VJ 帯)





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by byogakudo | 2015-05-11 21:37 | 読書ノート | Comments(0)


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