猫額洞の日々

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2015年 05月 15日

佐野洋「同名異人の四人が死んだ」1/2

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 写真は「昭和のくらし博物館」で。由緒正しいちり取りや消し壺。
ここや「江戸東京たてもの園」や三鷹の「国立天文台」、さらには
大川がぐっと、うちの近くに接近してくれたらなあ...。散歩が楽に
なる。

 足で鶴を折るのが佐野洋、ポケットの中(の小紙片)で、片手で
鶴を折るのが新井素子だ。こういう手作業・足作業について、読む
のは好きだが、実行には至らない。足で折ろうなんて、まず足や脚が
ツル(駄洒落ではなく)だろうし、両手で折る千羽鶴は、見るのも
折る話も嫌い。

 昭和48(1973)年、単行本として出された「同名異人の四人が死んだ」
は、新聞の学芸部部員が主人公だ。社会部以外ならどこに配属されても
いい、という性格づけがされている。
 彼が受持つ作家が連続殺人事件の物語を書いたが、その小説に出てくる
被害者と同じ名前を持つひとが次々に殺される事件が実際に起き、彼は
否応なしに、社会部と歩調を合わせた行動をとることになる。その過程で
小説家の美人秘書に惹かれたり、新聞社の地方支局にいたとき、つき合った
ことのある看護婦とよりを戻したり、などと私生活が描かれる。もっぱら、
そっちを読んでいる。

 30歳くらいの主人公はお昼過ぎの<スナック『いぶき』>(p7)で、スパゲッティ
を食べる。住まいはアパート(p24)。同名異人の被害者のひとり(34歳の貿易会社・
営業課長)は<品川のマンション>(p22)でガス中毒死するが、まだマンション=
高級な時代である。

 美人秘書と事件について話をするのが<"モリエール"という喫茶店>(p41)の
筈が、ジュークボックスもある<駅の近くのスナック>(p43)になる。彼女とは
或る病院近くの<『ロン』という喫茶店>(p67)でも話す。

 以前つき合った看護婦はこの病院勤務になっていた。病院の入院患者について
調べたくて、彼は看護婦のアパートを訪ねる。
<『向日荘』は、木造二階建モルタル塗りのアパートで、土佐弥生[注:看護婦]の
 部屋は、二階の端、道路に面した側にあった。道路から、すぐに階段をのぼり、
 直接、部屋に通じる形式で、六畳一間と台所、それに手洗いはついていたが、
 浴室はないという。
  「バス付きだと、部屋代が、ぐんとはね上っちゃうの。それに、あたしたち、
 病院の風呂が使えるから......」
  と、彼女は、弁解じみたことを言った。
  六畳の真中に、置きごたつがあった。電気ごたつで、それほど大きいものでは
 ないが、タンス、テレビなどの家具もあったから、よけいに、部屋が狭く感じられる。>
(p81)
__今の若いひとが読むと、昔のTVの2時間ドラマに使われていたような、ひどく
貧乏くさい部屋に思われるかもしれないが、ある程度以上の定収入がないと、ここは
借りられない。

 いつか、Sにもう一度聞いて、小滝橋の"ピンクハウス"について書いておこう。70年代
の若いひとの住生活記録として。

     (佐野洋「同名異人の四人が死んだ」 講談社文庫 1978初 フェア帯 J)

5月18日に続く~





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by byogakudo | 2015-05-15 21:34 | 読書ノート | Comments(0)


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