猫額洞の日々

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2015年 05月 22日

シャーロット・パーキンズ・ギルマン/西崎憲 訳「黄色い壁紙」!

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 写真は19日の銀座のショーウィンドー。通り過ぎようとして、あんまりすてき
なので、Sに撮ってもらった。ショッキングピンクやシャケ色(サーモンピンク)
を使って、こんなにグレイドを感じさせる。ブランドって、なるほど、存在理由
があるのだと納得した。
 たまたま扉が開いたので見かけた、グッチの女店員は清楚で賢そうな美人
だったし、イッセイ・ミヤケはあの服がよく似合う、派手やかなタイプだった。
TVで見る若い女性タレントがみんな同じ顔に見え、美人だと思うことがない
年齢になったが、あの日見かけた女店員たちは、はっきり、タイプの異なる
美女だった。

 という話からフェミニズム怪談に移るのも変だけれど、シンシア・アスキス 他/
倉阪鬼一郎 南條竹則 西崎憲=編訳「淑やかな悪夢 英米女流怪談集」中の
シャーロット・パーキンズ・ギルマン/西崎憲 訳「黄色い壁紙」が、ほんとに
素晴らしかった! 悪くない佳作集で、他の作品もいいのだけれど、「黄色い
壁紙」の印象が強すぎて、他を忘れてしまいそうだ。

 古風にいえば産後の肥立ちが悪くて神経衰弱(という言い方があった)気味の、
若い女性(妻であり母親)の手記の形で綴られる。
 医師である夫から、毎日何もしないこと、安静に過ごすよう言い渡されている。
彼女自身は、
<性(しょう)にあった仕事や興奮や気晴らしこそが、健康のために必要だと
 信じている>(p82)のに、
夫の指示は逆であり、彼女は妻であり患者でもある立場上、彼に従うしかない。
夫や家人の目を盗んで、彼女は秘かに書き物をする。

 彼女の苛立ち。19世紀末に発表された怪談だけれど、1975年前後にわたしが
感じていた苛立ちと、そっくり同じじゃないか。どうして男は女の言うことが
分からないのだろう、同じ日本語なのになぜ、男と女とでは言葉が通じないの
だろう、わたしの感じている違和感・ニュアンスの違いをなぜ、男たちは理解
しないのだろう、男たちはどうして女は論理的じゃないと言うのか、口に出さなく
ても、自分の論理的優越性を見せびらかしてるとしか見えないのはなぜだろう...。

 思い出せばいくらでも出てくる。ほんとに腹立たしいものがあった。長梅雨
だったある年、わたしは穴居人の時代から女を生き続けていて、赤ん坊を抱えて、
男がマンモス狩りから戻ってくるのを待っている、というヴィジョンに襲われた
ことがある。(当時もその後も子孫を持たなかったのに)ひとりの女は過去の
無数の女たちの記憶を共有するのだ。
 だから、近頃の若い男たちが同世代の女たちから愛されることが少ないと感じても、
彼女たちに怒ってはならない。愛されない原因は、女たちを怒らせてきた男たちの
歴史にあるのだから、自分たちのせいではなくても、前代の男たちのツケを払うこと
から始めなければ、女たちとの関係修復はできない。戦争に於ける加害責任の取り方
と同じである。

[同日追記:理不尽だと思ったら、ドイツの戦争責任の取り方を思い出せばいい。
(わたしの解釈だが)戦後ドイツは悪をすべてナチズムに被けて、ドイツ人の無垢
を保証する、という合理化を図った。今の若い男たちも、男の悪を「日本の近代の
男」に被けて、自らの無垢を担保するやり方で行けばいいのだ。]

 「黄色い壁紙」の始まりの部分は、まさに女の苛立ち、立腹に満たされている。
貞淑なイヴを強要されてきたリリスが、狂気によって力を得、復讐を遂げる物語と
読んでもいいだろうが、フェミニスティックな基調から徐々に狂気やスーパーナチュ
ラルな方向へと移行していくのが、なんとも見事だった。

     (シンシア・アスキス 他/倉阪鬼一郎 南條竹則 西崎憲=編訳
     「淑やかな悪夢 英米女流怪談集」 創元推理文庫 2006初 帯 J)





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by byogakudo | 2015-05-22 19:36 | 読書ノート | Comments(0)


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