2015年 06月 02日

池波正太郎「青春忘れもの」も再読している

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 常盤新平「銀座旅日記」はSが先に読んでいたので、常盤さんの
アイドル(?)池波正太郎の「青春忘れもの」の再読も始めていた。

 むかし読んだはずだが、やはり茫漠たる記憶だ。池波正太郎・少年
が十五世・市村羽左衛門からサインをもらった話は覚えているのに、
その前に出ていた重光葵から白扇に書いてもらった件は、初めて読む
かのような思いである。

 池波正太郎・少年の職歴も、カブ屋をしていたことしか覚えていないし
__実際、作家として立つ前の職業でいちばん長く関わったのがカブ屋
であろうが__、看板屋勤めの話は頭から消えていた。

 少年・池波正太郎はまだ13歳だ。看板屋の主人から重光がえらい人だ
と聞いて、文房具屋で白扇を買い、何か書いてもらおうと思う。麹町の
重光葵邸の壁塗りに行くが、重光葵が在邸してるか、お目にかかれるか
分からないのに、そこは子どもだ。
 ところが在邸していた。家族は軽井沢に行っていて重光葵しかいない。
壁塗りをしているのを興味深げに見にくる。正太郎・少年は逡巡せず、
白扇を取り出し、
< 「ひとつ、おねがいします」
  と、やったものだ。>(p58)

 3日後、仕事が終わる。重光葵がまた現れ、
< 「君らはようはたらくねえ。応接間にお茶とケーキが用意してある
 から来なさい」
  「あの、書いてくれましたか?」
  「書いてある」
 [中略]
 重光氏は手ずから銀製の茶器をとって、紅茶を私たちにいれてくれた。>
(p59)

          (池波正太郎「青春忘れもの」 中公文庫 1998改版 J)





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by byogakudo | 2015-06-02 21:52 | 読書ノート | Comments(0)


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