猫額洞の日々

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2015年 06月 08日

常盤新平「銀座旅日記」読了

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~6月6日より続く

 検索してみると「銀座旅日記」は、常盤さん最晩年のお仕事のひとつ
のようだ。
 翻訳は、毎週金曜日に女性翻訳者たちとの勉強会を続けていらしたが、
常盤さん個人名での翻訳(編集)書刊行は2009年まで。

 2003年3月1日(土)の日記に、
<老生の誕生日。七十二歳。老醜をさらしたくないのに、こんなに長生き
 しちゃって。>(p38)
と記されても、まだまだお元気で、連日のように地下鉄や電車を乗り継いで
外出されている。最後の日記(2006年7月13日)まで読んで行くと、老いと
衰えが目立たなくひっそりとひとに忍び寄り、ひとを包んで行く様子が浮かび
上がる。老いを学ぶ本でもある。

 胃癌が見つかり入院するとき、ゲイ・タリーズ「作家の人生」を携える。
手術後の2003年6月6日(火)、
<『作家の人生』のタリーズは老年になって挫折を味わい、それが読んでいて
 哀しい。『ニューヨーカー』に書いた原稿は前編集長ティナ・ブラウンに
 あっさりボツにされ、クノップフ社でも書きためた原稿が編集者に拒否
 された。タリーズはたんたんと書いている。美しい落日を見るような感じ
 がする。>(p376)

 2005年9月21日(水)、
<野口冨士男『散るを別れと』のあとがきに「生存にあきてしまっている
 ような私自身」とあった。小生もそうであるが、本を読み食う楽しみが
 まだ残っている。>(p304)

 2005年10月7日(金)、
<石光真清、四部作の二冊目、『曠野の花』(中公文庫)を読み続ける。
 [中略]
 一冊目の『城下の人』からとても面白かった。年を食っていい本に
 めぐりあえるのは嬉しい。>(p309)
 10月22日(土)、
<この手記をもっと早くに読まなかったのかと悔やまれるが、年を
 とったからこそこのような名著を読むことができたのだ。>(p314)

 2006年3月8日(水)、
<つきあう人がとみに減って、活字を読むしかない。読んだことを
 話したいのだが、聞いてくれる人もいなくなった。猫に話しかける。>
(p352)


 1970年代にバイブルだったホレス・マッコイ/常盤新平 訳「彼らは
廃馬を撃つ」が1988年に王国社から復刊されていたことを知らず、
さらに今年5月、白水社からUブックスで復刊されたことも知らな
かった。常盤さんにあらためて感謝しながら、再読したい。

     (常盤新平「銀座旅日記」 ちくま文庫 2011初 帯 J)

[同日追記:
 常盤氏が2006年3月24日(金)から読みはじめた「銀座社交飲料
協会八十年史」(p355)が欲しい。非売品だが2005年刊だから、
どこかで手に入らないかなあ。]





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by byogakudo | 2015-06-08 14:08 | 読書ノート | Comments(0)


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