2015年 06月 24日

ロバート・エイクマン/今本渉 訳「奥の部屋」2/5

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 先日、伊呂波文庫で買ったロバート・エイクマン/今本渉 訳「奥の部屋」、
こんな感じの作品、と述べるのが、なんだか難しい。まだ収録作5作中の2点
しか読んでないけれど。

 1960年代に書かれたので、ヒロインは仕事をもっている。会社員だったり
作家だったりする。普通の生活者があるきっかけで怪異に遭遇する、という
パターンで、それは大抵の怪奇小説がそうだけれど、うーん、ほんとになんて
言えばいいのだろう。口先女を言葉に詰まらせる...。

 翻訳者の文体が平井呈一風の古風さをもつことも、イギリス怪談の伝統を
感じさせるのだろう。第二篇『髪を束ねて』から引用してみる。会社勤めだが
誰も私生活を知らないヒロイン、クラリンダが、同僚のダドリー・カーステアズ
と婚約を発表した件りだ。

< いや、発表に及んだのはむしろカーステアズの方だった。声のつい届く
 ところに事情を全く知らぬ者がいるというのでは、とてものことに黙って
 おれず、それに何より、自慢したくて堪らなかったのだろう。数年越しで
 やっと努力が報われたのであり、しかもその間とて、山あり谷あり、決して
 平坦な道のりではなかったのだから無理もない。>(p58)

 ああ、そうか。主人公がミドルクラス以上に設定してあるので、時代が新しく
とも、イギリス怪談風味を伝えるのだ。

 ヒロインと周囲の人々は躾がいいから、ショッキングなできごとに遭遇した
ヒロインは口をつぐみ、周囲の人々も何かあったのかと感じても、立ち入って
は失礼だから何も言わず、日常が続いて行く。
 ヒロインの視点で書かれているので、周囲の人たちが、何かあったと薄々
感じているのか、まるで感じてないのかも分からないが、何があろうと日常が
続く異常さだ。

 なるほどと、ひとり合点して次の作『待合室』を読んで行こう。

     (ロバート・エイクマン/今本渉 訳「奥の部屋」 魔法の本棚シリーズ
     国書刊行会 1997初 函 帯)  

6月26日に続く~  





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by byogakudo | 2015-06-24 15:11 | 読書ノート | Comments(0)


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