猫額洞の日々

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2015年 07月 17日

マーガニータ・ラスキ/横山茂雄 訳「ヴィクトリア朝の寝椅子」読了/安倍・森プロレスごっこ

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 「20世紀イギリス小説個性派セレクション1」のマーガニータ・ラスキ/
横山茂雄 訳「ヴィクトリア朝の寝椅子」を読んだ。
 シリーズ・タイトル"個性派セレクション"というのが辛いネーミングだが、
この際あきらめる。作家はそれぞれに個性があるのに、個性派と銘打つのは
何も言ってないに等しく、女の子のファッション雑誌の見出しじゃあるまいし、
という文句はあるのだが。

 ところで、名作! 読みながらシャーロット・パーキンズ・ギルマン
/西崎憲 訳「黄色い壁紙」
を、ちょっと思い出す。「黄色い壁紙」は
19世紀末のアメリカ、「ヴィクトリア朝の寝椅子」は1952年のロンドン
だが、閉じこめられた女、という点で思い出したのだろう。だからって、
どちらもフェミニズムの観点からのみ読まれるべきではない、深さと
広がりのある小説的時空だ。

 若い裕福な夫婦。夫から可愛いお馬鹿さん扱いされる妻は、結核に冒され
ながら出産して、予後を養っている。やっと寝室から移動して、居間の寝椅子
で午睡を取ることが許される。
 ヴィクトリア朝の寝椅子は骨董屋で手に入れたが、横たわり眠りに陥った
瞬間、20世紀の若い女は寝椅子を通じて、1864年の元の持ち主の人生に
浸透される。悪夢のタイムスリップ、または前世、或いは幻覚が始まる。

 ふと目を覚ます。寝椅子を除いて、何もかも別の空間・時間にいるようだ。
病いに冒され、寝椅子から動けない状態にあることだけが、変わらない
"わたし"だ。
 1952年のメラニー・ラングドンの場面でも、妙に描写が細かいと感じさせるが、
1864年のミリー・ベインズが浸潤してくると、強迫神経症的なまでに精緻な描写
が続き、息苦しい。顕微鏡的描写の連続が、圧迫感をつのらせる。
 自分が他の時間からやって来て、この肉体に閉じこめられていることを分かって
もらおうとして、彼女・メラニー/ミリーは思いつく。

<そうだ、新発見、新発明だわと彼女はここで思いついた__その話をすればいい。
 まちがいなく、わたしの正体は証明される。今では飛行機(エアロプレーン)が存在
 するのよと、彼女は心の中で試しにまずいってみた。続いて、声には出さずに口だけ
 動かして繰り返してみようとしたが、けれども、肝腎の言葉が出てこない。わたしは
 いったい何といったのかしらと彼女は自問した__飛ぶ機械、それとも、航空機械
 (エアロノーティック・マシン)? ラジオ__と彼女は心の中で叫ぶ__テレビ、ペニ
 シリン、蓄音機のレコード、真空掃除機。だが、どの言葉も唇をついて出てはこない。
 頭の中で思い浮かべられはするのに、なぜ口にできないの? 彼女は請い願うような
 気持で思った。わたしはこの本当の過去に何も持ち込めないというの? そして、もし
 できないとしても、いまわたしが頭の中に思い浮かべていることはかつてミリーも
 思い浮かべたの? けれど、ものごとは一度しか起こらないはずだわ__彼女は疲れ
 果てた調子で自分にこう言い聞かせると、眼を閉じた。[以下略]>(p87)

 そして、きっかけが寝椅子であるのは、寝椅子の上で行われた行為、セックスに
関係する。性的のみならずエクスタシーは魂を肉体から解離させ、時滑(じすべ)り
が起き...。

     (マーガニータ・ラスキ/横山茂雄 訳「ヴィクトリア朝の寝椅子」
     新人物往来社 2010初 帯 J)



 途中から新国立競技場・見直しというテーマが出てきたので、台本なしの
安倍晋三・森喜朗プロレス興行だ。TVカメラを入れてネクタイの掴み合い
でも見せるかと思っていたら、暗闘(だんまり)すら演らず結果だけ発表した。
 これで市民が戦争法案を忘れると読んでいるのか?! 市民は何が何でも
戦争法案廃棄と叫んでいるのだ。

 今朝の「東京新聞」に、内田樹の分析が出ていた。
<七十年前の敗戦で帝国主義国家日本は一夜にして平和国家にさせられたが、
 明治維新以来、琉球処分、朝鮮併合、満州建国と続いてきた暴力的な国民的
 メンタリティーは消えたわけではない。抑圧されただけだ。
  表に出すことを禁じられた「邪悪な傾向」が七十年間の抑圧の果て、フタを
 吹き飛ばして噴出してきたというのが安倍政権の歴史的意味だ。彼らに向かい
 「間違ったことをしている」と言い立てても意味がない。彼らは「間違ったこと」
 をしたいからだ。
  明らかに憲法無視の法案が強行採決された基調にはそんな無意識な集団心理
 がある。一部の日本人は「政治的に正しいこと」を言うのに飽き飽きしている。
  ヘイトスピーチや非正規労働者の雇用条件引き下げは、「他者への気づかい、
 弱者への思いやり」というふるまいが「胸くそ悪い」と思うからこそできるのだ。
 [中略]
 [注:今の一部の日本人には]平和憲法が敗戦国民にどれほど深い安堵(あんど)を
 もたらしたかがわからない。憲法が「空語(くうご)」にしか思えないのだ。>





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by byogakudo | 2015-07-17 21:33 | 読書ノート | Comments(2)
Commented by saheizi-inokori at 2015-07-17 23:25
日本国民の心中にひそんでいるヤクザ意識が放たれたわけです。
それを受けとめるのは万世一系神聖にして不可侵の天皇というわけで、ヤクザ映画の床の間の「天照大神」の掛けじがまざまざと蘇えります。
神の国発言の蜃気楼と金と軍事力だという安倍の臭い臭い芝居ですね。
Commented by saheizi-inokori at 2015-07-17 23:26
そうそう、今日のブックオフにはセイヤーズがなかったです。


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