猫額洞の日々

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2015年 08月 03日

源氏鶏太「社長物語」読了+武藤貴也の妄言

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 "プロレタリア文学"と呼ばれる小説を読んだことがない人間が
こんなことを言っていいものか、気が引けるけれど、これは"プロ
レタリア・エンタテインメント"ではないかしら?

 源氏鶏太が高度経済成長期に人気があった作家なのは、なんと
なく知っている。日本中の職業人のほぼすべてが、サラリーマンと
呼ばれる時代に、彼らを主人公とした小説を書いて愛読された、
のだった。

 「源氏鶏太自選短編選集 4 社長物語」だけでは、主人公全員が
"しがないサラリーマン"であるかどうか断定できないが、おそらく
そうではないかしら。どの短篇にもペーソスっていうのか、悲哀が
横たわる。

 社長が主人公であっても、親会社に逆らったらすぐ倒産しそうな
中小企業の経営者だ。他の主人公も、工員あがりで、小さな会社の
子飼いの老社員だったり、B・Gと呼ばれた頃の女子社員の父親も
また、出世せずに定年を迎えようとする男であったりする。

 高度経済成長期には、ブルーカラーの工員よりはホワイトカラーの
サラリーマンの方が身分(?!)が高いと思われていたかもしれないが、
大企業の役付きなら知らず、ヒエラルキーの下部にいるサラリーマンと
工員とで、実質賃金でどれほどの差があっただろう? 月給では少ししか
違わなくとも、ボーナスの有無や額で違ってきたのだろうか? 
 しかし、これらのサラリーマンたちが、子々孫々にまで続く財産を築けた
とは思えない。

 源氏鶏太作品の登場人物たちは、ちょっと進退を誤るといつでも
彼らの祖先であるルンペン・プロレタリアートに舞い戻りそうな気配
がある。"洋服細民"と呼ばれた、戦前の腰弁サラリーマンと、どれ
ほどの違いもなく、彼らの根っこにはいつも、失業の不安がある。

 だから、職場でどんなにいやなことがあっても辛抱しなさい、妻子を
路頭に迷わせないために我慢して定年まで勤め上げなさい、という
メッセージがしばしば物語に入り込む。
 じっと黙って耐えていれば、いつか厭な上司も定年で職場を去るだろう、
どこか別の勤め口が見つかったとしても厭な奴はどこにでもいる。だから
じっと我慢しようと、諦観のもと、毎日の勤めを続けることが奨励される。
 
 経済成長の余地がある時代には、有効な道徳だ。会社は社員の忠実な
働きぶりを期待できるし、社員は定年までの安定を期待できる。
 10年くらい前に見たTV番組で、毎日、携帯電話でその日の仕事場を確認
しては、工場などの臨時の仕事に行く若い男性(同世代の女性と暮らして
いるが彼女の働き方も同じだった)が紹介されていた。携帯電話というツール
こそあるけれど、毎日、たちんぼして暮らすのと変わりない。将来の展望など
不可能な生活にショックを受けたのだが、そんな彼に対して彼の両親が、
時代の変化が理解できず、今度こそ辛抱して勤めてくれればと願う姿が悲しく、
経済成長が終った時代に、新しい働き方が工夫されていない惨さに怒りを
感じたのだった。

 源氏鶏太の物語に戻れば、装飾符があまり見られない、短いセンテンスで
つましい生活を簡潔に語るスタイルが効果的だ。うまいし、主人公に自分の
境遇を重ねて、しみじみと自己肯定もできるし、人気作家だった訳がわかる。

(源氏鶏太「源氏鶏太自選短編選集 4 社長物語」 集英社1972初 J)


 TV中継もされず夕方のニュースでちらっと見たくらいだが、磯崎陽輔が、
国会に顔を出してTVカメラの前に顔をさらして謝ったのだから、これでいい
だろうと言わんばかりに「辞任しない」発言をしていたが、安倍晋三の手下は
政治的に正しくない発言をする者にこと欠かない。武藤貴也のツイッター
馬鹿度に於いて磯崎陽輔に引けを取らない。

 武藤貴也が消去する場合も考えられるから、7月30日付け発言をここに
ペーストしておこう。
<SEALDsという学生集団が自由と民主主義のために行動すると言って、
 国会前でマイクを持ち演説をしてるが、彼ら彼女らの主張は「だって戦争に
 行きたくないじゃん」という自分中心、極端な利己的考えに基づく。利己的
 個人主義がここまで蔓延したのは戦後教育のせいだろうと思うが、非常に
 残念だ。>
(https://twitter.com/takaya_mutou/status/626788645379280896)

 1979年5月25日生れ(36歳)の男が、こんな発言をする。これまた
「文化芸術懇話会」メンバーだそうで、安倍晋三の手下はほんとにもう、
どこまで馬鹿を貫きたがってるのか。





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by byogakudo | 2015-08-03 20:24 | 読書ノート | Comments(1)
Commented by saheizi-inokori at 2015-08-03 22:18
こいつがいちばん戦争にはいかないでしょう。


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