2015年 08月 04日
J・G・バラード最後の長篇小説の翻訳。相変わらずというか、P・K・ ディックと同じようにバラードもまた、いつも同じことを書き続けた作家 だが、そんなことをいえば、つくる人々はいつも、いくつかの歌を様々に 変奏する。 バラードの場合は終末の風景画で、「千年紀の民」ではロンドンの 高級住宅地、チェルシー・マリーナ(海がなくてもマリーナ! 砂漠の マリーナだ)の住人たちの反乱が描かれる。 < ガス工場の跡地に建てられたチェルシー・マリーナは__私立教育、 晩餐会文化、そして、レコード産業のプロデューサーや新聞のコラム ニストのような無産知識階級(ルンペン・インテリゲンチア)や、広告 業者といった「下層」階級に対する、決して是認されることのない嫌悪 といった__部族のトーテムを保存したがっている有給専門職階級の ために設計された。そのような連中はすべて審査委員会によって排除 された。>(p50上段) しかし、内部の反抗者に言わせれば、 <「この場所全体が責任ある中産階級専用なんだけど、いまでは高級 スラムになりかけている。ここには都市優遇税制も、株式オプションも、 企業クレジットカードもない。私たちの多くはほんとうに無理に無理を 重ねているのよ。[以下略]」>(p51上段) 貧困層が富裕層に反抗するのではなく、富裕な人々の間での貧富の差 に発する、外から見れば自傷行為にも似た、爛熟の果ての反乱だ。 主人公は、前妻が空港でのテロで殺されたのをTVで知った精神分析医。 社会の無意識層を探ることで犯人と犯行の実態を認識しようと、反抗者たち に近づき、巻きこまれて行く、彼自身のための二重スパイだ。 (J・G・バラード/増田まもる 訳「千年紀の民」 東京創元社 2011初 帯 J) 8月7日に続く~ ところで、せっかく「東京新聞」7月31日付け朝刊に首相補佐官・ 磯崎陽輔の妄言の数々がまとめてあるので、馬鹿暦として引用して おこう。以下、適宜引用だが、引用を示す < や > を省く。 磯崎陽輔は1957年生れ、10月9日で58歳。 1982年、東大文1卒業、旧自治省に入省。 2002年2月、内閣官房内閣参事官(安全保障・有事法制担当)。 2006年、48歳のとき、総務省大臣官房参事官で退職。 2007年の参議院選挙、大分選挙区で初当選、現在は二期目。 一期目の2012年12月、首相補佐官に抜擢され、安倍晋三の戦争法案 政策を推進してきた。 [注:「東京新聞」では政治用語の「安全保障政策」と表記されているが、 当ブログでは実質表示に変更。敬称もまた省く] 不特定秘密保護法案 [注:「東京新聞」では政治用語の「特定秘密保護法案」と表記] に批判的なTV報道には、 「キャスターが『廃案にさせなければならない』と明確に言った。明らかに 放送法に規定する中立義務違反だ」 [注:ピストルのおまわりみたような発想をする男だ] 安倍晋三は、「国民の知る権利や報道の自由への配慮も重要。適切に 対応する」と釈明。 磯崎陽輔は、自民党憲法改正推進本部事務局長でもある。今年2月、 盛岡市で講演。まず環境権などを加える「お試し改憲」をやって、 「国民に一回味わってもらう。『怖いものではない』となったら、二回目 以降は難しいことをやっていこう」 [注:市民の意識をなめきった野郎だ] ツイッターでももちろん妄言。 憲法で権力を縛る立憲主義について、 「この言葉は学生時代の憲法講義では聴いたことがない。昔からある 学説なのか」 [注:ほんとに東大法学部卒なのか?] 戦争法案 [注:「東京新聞」では政治用語の「安保法案」表記] も担当する磯崎陽輔は、6月上旬の自身のツイッターで、隣家の火災に 例えて集団的自衛権を論じたところ、十代の女性を名乗るユーザーから、 「バカをさらけ出して恥ずかしくないか」と反論され、 「バカとまでおっしゃってくれているので、あなたの高邁(こうまい)な理論を 教えて。中身の理由を言わないで結論だけバカと言うのは『××』ですよ」。 ユーザーが、 「火事には攻撃してくる敵がいない。戦争は殺し合い」「しかも個別的自衛権 で十分対応可能」と書き込むと、磯崎陽輔は自分のツイートを見られないように ブロックした。 こういう男の、戦争法案に「法的安定性は関係ない」発言である。満を持しての 発言であろう。 web検索したら、野党時代は「法律守れ!」と絶叫…礒崎首相補佐官の“二枚舌” という日刊ゲンダイの記事もあった。ご都合主義である。 磯崎陽輔は東大卒、昨日の武藤貴也は東京外語大卒の京大大学院修了。 国公立大学には税金が使われている。学歴と知性になんら相関関係はない けれど、それにしても無駄金が消費された。
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by byogakudo
| 2015-08-04 19:23
| 読書ノート
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