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猫額洞の日々

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2015年 08月 26日

トマス・チャステイン/真崎義博 訳「死の統計」読了

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 写真は8月18日の本郷台地。この辺りで小学生の男の子とすれ違ったら、
「こんにちは」と挨拶され、こちらも挨拶を返す。学校の教育なのか、
お家のしつけなのか、いい習慣だ。

 先日の伊呂波文庫で手に入れたトマス・チャステイン/真崎義博 訳
「死の統計」。検索して確認したら__もう、記憶は外注するんだ!
__、これで「16分署乗取り」以外の4冊を読んでいるらしい。('85年
現在、全5冊翻訳出版されている。)

 16分署シリーズの主役はお洒落なニューヨーカー、マックス・カウフマン
署長だが、番外編なので元警官、いまは私立探偵のJ・T・スパナーが主役を
張る。
 違いの分かる男、マックス・カウフマンみたいな鬱陶しい描写はないが、
スパナーはスパナーで、離婚した元妻ふたりが秘書をする探偵事務所を
やっている。前妻同士は仲がいい。彼は彼女たちそれぞれと、時々寝ている。
それでも理想的な(だろうか? 喧嘩するよりいいが)三角関係を保っている。
結婚には向かないが、友人には向く男なのだろう。

 ハリウッドのアクション映画を見ていると、すぐに殺されそうなキャラクター
が出てきて、予想通り次のシーンで殺されるが、ここにもそんな男が出てくる。
 1977年(原作刊行年)から30年以上前(だから戦前)に、西海岸では人を
雇ってわりと大手の私立探偵事務所を経営していたのに、老人(60歳ぐらい!)
になった今や落ちぶれてワンマン・オフィスに住み込んでいるような老探偵に、
スパナーが質問する。

< 「当時向こうで、マーロウ__フィリップ・マーロウ__という男に会った
 ことはないか?」
  「マーロウ__マーロウね__聞き慣れた名前だが思い出せないな」
  「スペードという私立探偵はどうだ? サム・スペードというんだが」
  彼は考えていたが、やがて首を横に振った。
  「いや、知らない」
  「ふたりとも、向こうの私立探偵だ。マーロウはロスアンジェルス、スペードは
 サンフランシスコで動いていた。俺の聞いたかぎりでは、ふたりとも信頼できる
 男で、かなりの仕事をしたらしい」
  「俺はロスアンジェルスやサンフランシスコで仕事をしたことはない」[中略]
 「サン・ディエゴにいたんだ」>(p89)

 こんなにあからさまに言及しなくてもと思うが、1977年なら、これも許されるか?

 物語は、特に悪女の扱い方(大した悪女ではない)に、マーロウ的なものを感じ
させなくもない。犯罪都市ニューヨークの苦々しい物語。

 なぜかヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンクを再読したくなった。

     (トマス・チャステイン/真崎義博 訳「死の統計」
     サンリオ文庫 1985初 帯 J)

 最終頁はサンリオ文庫目録だ。<ロマンス>なんてジャンルもあるが、
<ビジュアル>に小林信也 編「自分で、自分に火をつけろ。 長嶋茂雄語録
というタイトルがあった。ほんとに出版されてる...。





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by byogakudo | 2015-08-26 17:30 | 読書ノート | Comments(0)


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