2015年 10月 17日

戸板康二「最後のちょっといい話 人物柱ごよみ」読了

e0030187_1581212.jpg












~10月16日より続く

 『いわゆる奇(く)しき話ばかり』より__

< 志賀直哉が奈良から昭和十三年に東京に引っ越す時、
 つれて来たクマという紀州犬が突然失踪(しっそう)した。
 いろいろさがしたが、見当らないので、家族一同、半ば
 あきらめていた。
  ある日、子供のために本を買うので神田へゆくことになり、
 出ようとすると客が来て、予定より大分おそく、バスで出か
 けた。
  江戸川橋のところを通ると、橋を渡って護国寺のほうへゆく
 老犬がクマに似ている。女車掌の制止を無視して飛びおり、
 必死になって追いかけ、協力者をえて、寺の門前で、やっと
 捕えたら、やはり愛犬だった。 
  『クマ』という短編がある。この犬、タクシーで志賀直哉の
 肩に手をかけて、家までおろさなかったという。>(p118)

__消しながら消しながら書く書き方だと思う。必要最小限の
情報量で、最後の行できちっとキメて余情を残す。

 『笑わせる芸能人の笑わせる話』より__

< 昭和初年に吉原で鳴らした桜川忠七、この人『たいこもち』
 という本を残した稀代の幇間である。年のくれに何となく座敷で
 しょんぼりしていると、旦那が事情を聞いて、借金を全部払って
 来たらいいと、金を手渡した。すっかりすませて帰って来たのを
 迎えて、「忠七、嬉しいだろうな」と得意そうに声をかけたら、
 鼻を鳴らして、「フン、旦那ほどじゃねぇや」>(p528~529)

__生意気だけど、わたしだったら、<得意そうに>は外したい。
その前の旦那の台詞も変えて、
<「忠七、嬉しいかい」と声をかけたら、>にしたい。
 引き算し過ぎて状況が伝わらなくなるかもしれないが。

     (戸板康二「最後のちょっといい話 人物柱ごよみ」
     文春文庫 1994初 J)





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2015-10-17 15:59 | 読書ノート | Comments(0)


<< 山田登世子「メディア都市パリ」...      戸板康二「最後のちょっといい話... >>