2015年 11月 09日

マーティン・H・グリーンバーグ編/田口俊樹・他訳「新エドガー賞全集」読了

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~11月8日より続く

 最後の短篇、1988年度受賞作、ビル・クレンショウ/黒原敏行 訳
「映画館」が、なんともかっこよかった。

 どう言えばいいのだろう。マイケル・ケインの「アルフィー」で、
マイケル・ケインがときどき観客に向かって正面から、直接語りかける
ようなシーンがあって、その直接性が印象的だったけれど、あれを思い
出すような、いかす文体だ。

< ポケット・ベルで呼び出されるまでもなく、もともと署につめて
 いなければならない時間だということはわかっていた。>

__と、いきなり始まり、部屋に帰ってきたばかりの主人公、デヴィン・
コーリー警部補が部屋を飛び出す。飛び出す前には、

<ビデオの録画スイッチをいれビールを飲みほし、猫の水をかえ、いそいで
 シャワーを浴び、それから出かけた。スピードなどは気にしなかった。>
(p243)

 短いカットを次々につないで編集した、テンポのいい映画を見ているような、
そんな印象でもある。

 呼び出されて、映画館の観客が斬り殺された事件を担当することになる
のだが、おとなしく事件のことだけに限って話が進んだりはしない。彼の
私生活の話になったり、事件がホラー映画上映中に起きたので、片っ端
から最近のホラー映画を見てみるシーンがあったり__

< コーリーが子供のころ見た恐怖映画は、暗闇と、不確かなものと、
 得体の知れないもので恐がらせたものだった。
 [中略]
  しかし、いま見ているのはまったく別物だった。未知なものといえば、
 つぎに犠牲になる若者がいつ怪物にでくわすか、どのくらい残酷にされる
 かということだけだった。>(p259~260)

__文体、語り口で読ませる作家だろう。他はミステリ・マガジンで紹介
されただけかしら? もっと読みたいけれど、短篇集としてまとめて一冊に
ならないかなあ。

 速度と語り口の角度が気持よくて、そうだ、タイプの違う中篇だけれど、
フレッド・カサック「連鎖反応」(「殺人交差点」に収録)も思い出した。

     (マーティン・H・グリーンバーグ編/田口俊樹・他訳「新エドガー賞全集」
     ハヤカワ文庫 1992初 J)





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by byogakudo | 2015-11-09 18:06 | 読書ノート | Comments(0)


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