猫額洞の日々

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2015年 12月 08日

アンリ・トロワイヤ/小笠原豊樹 訳『仮面の商人』読了

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 写真は、北千住の大橋眼科。

 アンリ・トロワイヤ最後の小説『仮面の商人』、枯れて(?)
軽快なタッチで話が進む。楽しく読んだが、第一作『蜘蛛』の
ほうが、やはり好きかしら。

 構成はうまい。1930年代に設定された第一部では、売れない
若い作家の生活が描かれる。本は出せたが評判ゼロ。彼は結局、
自殺してしまう。

 第二部、第三部は、第二次大戦後、再発見され、認められる
ようになった作家の評伝を書こうとする試みの話になる。
 トロワイヤ自身が評伝作家でもある(読んでないけれど)ので、
評伝って、こんなにいい加減な調査で書かれているのですぞ、と
言わんばかりのコメディタッチで記される。

 第一部の若い作家は、ほとんど『蜘蛛』の主人公の兄弟か、
分身である。作家トロワイヤの分身でもあるかもしれない。
 若き日の自画像を晩年に振り返り、自分で自分をからかって
みせた作品が『仮面の商人』なのかもしれない。

 よく書かれた小説であり、構造面での面白さは楽しめる。
軽やかで、これはこれでいいのだろう。

 本体の表紙や背表紙、扉に奥付、どれもアンリ・トロワイヤ表記
なのに、ジャケットの背表紙だけ「A・トロワイヤ」になっている。
なぜ?

     (アンリ・トロワイヤ/小笠原豊樹 訳『仮面の商人』
     小学館文庫 2014初 帯 J)





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by byogakudo | 2015-12-08 15:48 | 読書ノート | Comments(0)


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