猫額洞の日々

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2016年 01月 31日

E・S・ガードナー/池央耿 訳『怯(おび)えた相続人』読了

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 27日(水)に買ったもう一冊、ペリー・メイスン・シリーズだ。あとがきに
よれば、ガードナー晩年の作になるらしい(原作は1964年刊、ガードナー
は1970年没)。

 シリーズなので、ペリー・メイスンは相変わらずタフで頼りになる中年
(であろう。若い男だと、やり手と設定してあっても、小説中の依頼人も
読者も、彼を信頼していいだろうかと考えるから)の刑事弁護士、秘書
のデラ・ストリートはおそらく、エンタテインメントに於ける恋愛可能
年齢の限度、28歳未満のまま(近ごろは36歳辺りまで延びているだろうが、
70年代以前のエンタテインメントでは30歳以後の女性キャラクターは
恋愛対象ではない)、24時間営業を誇る、私立探偵のポール・ドレイクも、
ジャンクフードで精力を保っていられるから、35歳くらいで居続けている、
ということか?

< ポール・ドレイクは、兎の巣のように狭く入り組んだ長い廊下の奥の、
 穴倉のようなオフィスに坐っていた。彼のデスクには四本の電話が引かれて
 いた。食べ残しのハンバーガーと脂の滲みた紙ナプキンを乗せた紙の皿が
 脇に押しやられていた。
  ドレイクはコーヒーの紙コップを前に置き、時々それを口へ運びながら
 電話で話していた。>(p231)

 彼はメイスンたちが、ちゃんとしたレストランでちゃんとした食事をしている
のをやっかむけれど、たしかにいいレストランとは書いてあるが、読んでいて
大しておいしそうに思えないのは、アメリカ人の食事に、こちらの偏見がある
からだろう。

 いつものペリー・メイスン・シリーズの速度(大変スピーディに話が進む)
にも関わらず、なんだか枯れた感触がするのは、二度の法廷シーンになる筈が、
二度目はペリー・メイスンが出廷せず、協力してくれた警部補に花を持たせ
たりするからだろうか?

 罠にかけられた元・弁護士秘書が、初めの事件ではメイスンの指示通り、
黙秘するのに、二度目の罠では、かっとなったとは言え、喋ればさっさと
帰してやるという警察の言葉を信用する、というのが不可解。"事務"弁護士の
秘書だから、こういう単純な警察のトリックにも引っかかるのか? 彼女が
困難に陥らないと物語が進まないからではあるが、彼女の非常識と、メイスン
に対する結果的不信頼には、無理がある。

     (E・S・ガードナー/池央耿 訳『怯(おび)えた相続人』
     創元推理文庫 1984年6版 J)





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by byogakudo | 2016-01-31 22:03 | 読書ノート | Comments(0)


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