2016年 02月 03日
~2月2日より続く 警視庁が昨夜、野球の清原を逮捕したのは、今朝の衆議院予算委員会で 稲田友美と安倍晋三が、掛け合いステューピッド漫才をやると知らされて いたので、その衝撃を吸収し、TVやマスメディアを使って人々の注目を 改憲ではなく清原に集めようという、独裁政権への忠誠の誓いではなくて? 1993年から94年にかけて書かれた『第2部 マディソン郡の謎』の 『12「バナナ・リパブリックの憂鬱」と孤立』を目一杯、引用する。 < <バナナ・リパブリック>という言葉がある。 [中略] <バナナ・リパブリック>は、すぐに独裁者が出たりする<にせの共和国> の意味だ。それも、中南米あたりの小国をイメージしていて、産物といったら バナナぐらい、といった差別的ニュアンスがある。 [中略] 近年、夜のニュースショウで、アメリカの女性記者が「日本は<バナナ・ リパブリック>だから」と、こともなげに言ったのは我が意を得た。そして、 日本はいよいよ<バナナ・リパブリック>への道を進んでいる。 つぶれた細川連立内閣に唯一のプラスがあったとすれば、日本の政治の <密室性>を打ち砕いたことだろう。政治家の離散集合がワイドショウのネタ になったのは空前のことである。[中略] 政治の質も落ちたが、新聞もTVもひどいことになっている。[中略] 政治は五流、新聞・TVもそんなもの。 では、文化はどうか? これまた、ひどい。 もともと(一九五〇年ごろ)、三流だったのが五流になっただけ、といって しまえば、それまでだし、五流の政治家をえらぶ国民は、文化的にも五流 といわれれば、これまた、そうですというしかない。 一九五六年(昭和三十一年)に、谷崎潤一郎が「鍵」を発表して、国会で 問題になった[中略]、あまりの非難にいやけがさして小説の結末を投げ 出したことをさいきん知った。ある対談の中で、谷崎は、 「あれ以上、つづけたら、国会に呼ばれた」 と笑っている。>(p115~118) 当時、谷崎を理解できたのは、<今となっては食いたりない>(p118)が、 伊藤整くらいである、と小林信彦は言う。 < その食いたりない部分を大きく補填(ほてん)したのが伊吹和子の「われより ほかに」であり、[中略]世界文学の中での巨人・谷崎について、重要な鍵となる 本が書かれたのは、五流文化国においては画期的な事件であった。 まともな人もいるのである。しかし、[中略]まともな人は業界(いやな言葉だが) の外にしか存在できない。思えば、谷崎潤一郎その人がそうであった。 それも、これも、<バナナ・リパブリック>だから仕方がない。すべて、 程度が低いのである。[中略] さて、<バナナ・リパブリック>に戻る。 ぼくは自信がないので、永井淳さんに正確な語意をたずね、辞書をひいて いただいた。答えは、ぼくが考えていた通りで、<バナナ>は文字通りの <バナナ>であり、<ちゃちな>の意味とかけてあるようだ。 ぼくの「世界でいちばん熱い島」(新潮社)は苦しまぎれの題名で、実は 「バナナ・リパブリックの憂鬱」と題するつもりだったのである。 やめたのは、[中略]そういうブランド商品があるのにぼくが気づいたのが 決定的だった。 [中略] しかし、商品とは別に、ぼくはこの言葉の侮蔑的な響きが好きだ。題名に 使うことはもうできないが、日本の政治から文化まで、そのレヴェルを表現する のに、これほど適切な言葉はそうはない。>(p118~120) 小林信彦はストーリーテラー・谷崎潤一郎を好む、高く評価する。 < <我といふ人の心はただ[注:踊り字]ひとりわれより外に知る人はなし> とは、谷崎の詠(えい)であり、谷崎は自分の孤独を承知していた。 じじつ、目下ブームの夏目漱石、太宰治にくらべると、谷崎作品は難解である。 読者の甘えを許さないというべきか。(永井荷風の人気は、ひねた読者の甘えを 許してくれるからだ。)> (p108『第2部 10 一九九四年のベストワンは決った!』) __この見解には同意しないが、言いたいことは分かる(と思う)。 しかしことは、ストーリー・テリングのテリング形態を、どう解釈し、かつ 実践するかだろう。そして如何に語るかという問題では、 < 少年時代から<純文学>しか読まず、ポストモダン小説を大学で習って、 その<きわめて特殊な小説観>に合わない小説はすべて否定する。> (p86『第2部 6<お稽古事>派批評の差別主義について』) __頭の固い、野暮天書生野郎どもかもしれないが、彼らの視点をも併吞 する意思なくしては、文学は怠惰に陥る危険性がある、とわたしは考える。 神戸の大地震と地下鉄でサリンがまかれた1995年から、終末が始まって いる訳ではなく、バブル経済が終わるや否や、凋落が始まり、いまだ続き、 混迷が更に深まる。 個体ならば死ねば末期症状も終了するが、共同体は罠を解きほぐして、 継続可能にするしかないのだ。 (小林信彦『<超>読書法』 文春文庫 1999初 J) 2月7日に少し続く~
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by byogakudo
| 2016-02-03 21:33
| 読書ノート
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Comments(2)
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saheizi-inokori at 2016-02-04 17:34
清原、同感です。文春の売り上げも落ちたでしょう。
けっこうショッキングなことが出ていますが。
0
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byogakudo at 2016-02-04 18:07
疲れるから考えたくない、自分なんかが考えたってどうしようもないじゃないか、
悪く目立つと非難されるでしょ、等々、騙されるのが好きな怠惰な卑怯者ばっかり、 みたような絶望感に囚われなくもありません。 |
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